2018年の色が発表 「リアーナが最も上手く使いこなす」パントン社

Pantone Color Institute via AP

 2017年は混乱と紛争の年だった。では2018年に求めるものとは?パントン・カラー研究所は、「ウルトラバイオレット」という深い紫色こそ、2018年のあらゆる出来事を象徴するだろうとし、今月7日、その色を2018年のカラー・オブ・ザ・イヤーに選定したことを発表した。

 ウルトラバイオレットは、高貴さを象徴する色とされている。しかしその威厳が今回の選定理由となったのではない。パントン社のローリー・プレスマン副社長が、発表に先立ちAP通信に語ったところによると、ウルトラバイオレットは、カウンターカルチャーの可能性やオリジナリティの追求、創造力、先見性を連想させる色であることから、2018年の色に選ばれた。

「私たちは複雑な時代を生きている」とプレスマン氏は言う。そしてこの色に対して、「我々は、人々が将来への不安を感じながら、その恐怖に立ち向かう様子を見出している」。

 プレスマン氏は、政治的なことを語ろうとはしなかった。彼女によると、ウルトラバイオレットは、枠組みの内側も外側も関係なく、枠組みに囚われずに生きるという考え方を反映した色であり、住宅デザイン、産業スペースや各種製品、ファッション、アート、フードに幅広く使用されている。そして具体的に言えば、「情熱的な赤紫色と、力強い藍紫色が混ざり合った、複雑性と融合」を表す色だと表現した。

 プレスマン氏が言うには、ウルトラバイオレットは赤みよりも青みが強く、「思慮深く、神秘的で、スピリチュアルな品格が感じられる」。わずかだが存在感のある赤色と、ペリウィンクルブルーが情熱的な温かみを漂わせるが、それを「圧倒しているのが、クールな色合いだ」。

 2018年の色はウルトラバイオレットに決定したが、前年の2017年には、「グリーナリー」が選ばれている。草のような生き生きとした、活力を感じるこの色が、新たな始まりの象徴として選定された。

 プリンスや、グラムロックの先駆者デヴィッド・ボウイ (いずれも2016年に他界) が、反逆を意味する色として紫色を取り入れたことにより、人々の生き方や周囲の物事を表現する上で、紫色に新たな解釈が加わったとプレスマン氏は言う。同時に、プロヴァンス地方の心地よく穏やかな、花畑の広がる風景を思わせる色でもある。

「紫はとても希望に満ちた色で、力を与えてくれる色だと思う」とプレスマン氏は言う。しかし「私たちは平和で、穏やかな気持ちでいたい。精神を落ち着かせるには、どのような方法があるだろう」。

 そこで、癒しの力を持つとも言われる紫色の照明を取り入れている、瞑想教室やヨガスタジオがある。またイギリスのある企業は、同様に紫色の照明を取り付けたシャワーヘッドを発表した。これを使えば、シャワーの水がまるで紫色の雨のように変わる。さらに食材ではナスや紫のカクテルだけでなく、紫色のカリフラワーや、ムラサキイモも人気だ。

 紫色には、数十年にわたる変遷の歴史がある。

 紫色は、1900年代前半にはイギリスの女性参政権運動のロゴに使われ、1920年代にはフラッパーと呼ばれた女性たちを明るく彩った。絵画においても時代を問わず使用されてきた。例えばラファエル前派の画家、アーサー・ヒューズの『傷つけられた心 (The Painted Heart)』 では、椅子に腰かけた女性が、紫色のドレスを着ている。さらにグスタフ・クリムトから、ワシリー・カンディンスキーを始めとするモダニスト、そしてキース・へリング、アンディ・ウォーホルに至るまで、様々な画家の作品に紫が使われている。

 さらに最近では、ジミ・ヘンドリックスとその楽曲、『パープル・ヘイズ (紫の煙)』がある。彼が死去する少し前の1970年9月6日に行われたコンサートで、最後から2番目に演奏した曲だ。プレスマン氏のよるとさらに、グレイス・ジョーンズ、レディ・ガガ、カイリー・ジェンナー、ビヨンセ、ケイティ・ペリー (髪の毛を紫に染めていたことを覚えている人も多いだろう)、そしてリアーナも、紫色を好んで取り入れてきた。

 リヒャルト・ワーグナーは、作曲をする時に、周囲を紫色で統一していたという。レオナルド・ダ・ヴィンチは、瞑想と祈りを「ステンドグラスの窓から差し込んだ、紫色の光の中に座って行うと、効果が10倍に高まる」と記している。

 ファッション業界を見てみると、ウルトラバイオレットは、2016年秋のショーで大々的に取り入れられた後、今年のコレクションでもアルベルタ・フェレッティやマルニに採用され、引き続きトレンドの色とされている。ケンゾーは2018年春のコレクションとして、モデルに明るい紫色のノースリーブのドレスを着せ、白黒のハイソックスと、黄色のハンドバッグを合わせた。

 美容業界では、ウルトラバイオレットは、アイメイクや口紅、ネイルなどに幅広く使用されている。ウルトラバイオレットは劇的な印象を与える色だが、人が身に着けるものや室内アイテムに使われる時には、さりげない印象となり、脅迫的な色とは感じられない。

 プレスマン氏によると、ウルトラバイオレットは「どのような色味の肌にも馴染む色だ」。

 しかしその中でもウルトラバイオレットを最も上手く使いこなしているのは誰だろうか? それはリアーナだとプレスマン氏は言う。特に2017年のディオールの広告では、ゴージャスな紫色の口紅を塗り、薄紫のサングラスをつけていた。

「この色のように、彼女はオリジナリティ、創造性、先見性、そして圧倒的な個性を完璧に兼ね備えた人物だ」とプレスマン氏は言う。「探求し、表現し、自分のやりたいことをする。彼女は他の誰とも違った考え方を持っている。彼女に限界などない」。

By LEANNE ITALIE, New York (AP)
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP