ヘンリー英王子の婚約者メーガン・マークル氏 ニュータイプの王族誕生

Evan Agostini, Invision / AP

 エンタメ業界で才能を発揮し、自身のバックグラウンドや恋愛を臆面もなく語る、堂々とした女性。米女優メーガン・マークル氏は、来年春にヘンリー王子との結婚を控えており、これを機に新しいタイプの王族が誕生することになるだろう。

 マークル氏はカリフォルニア州出身で、混血のアメリカ人だ。そして離婚歴がある。このようなバックグラウンドを持つマークル氏が英王室に加わるというのは、ある意味驚きの出来事だ。

 しかし王室の考え方は時代と共に変化している。マークル氏とヘンリー王子の関係に対する王室の見解は極めて寛容で、現代的な対応を見せた。

 マークル氏はアメリカの人気法定ドラマ『スーツ』で野心家のパラリーガル(法律事務員)を演じ、この役が彼女の代表作となった。そして今年9月、雑誌『ヴァニティ・フェア』の特集記事で、ヘンリー王子への気持ちを公にしたことで、大きな驚きを呼んだ。36歳のマークル氏は、王子との交際をめぐりメディアが大騒ぎしていることについて問われ、次のように答えている。「結局それはとてもシンプルなことだと思う……私たちは本当に幸せで、深く愛し合っている二人の人間というだけのこと」。

 マークル氏はヘンリー王子を自身の「ボーイフレンド」だと説明した上で、王子との関係についてある程度のところまでは、「公に話す」必要性を感じているが、二人は一緒に過ごす時間を楽しんでいる普通のカップルに過ぎないと語った。

「個人的には、壮大なラブストーリーが大好き」だと彼女は言う。

 王族の恋人が、婚約する前からここまでオープンかつ率直に語る意思を見せるのは、珍しいことだ。過去にヘンリー王子の恋人と報道された女性たちは、いずれもメディアの目を避けてきた。ヘンリー王子の義理の姉(旧名ケイト・ミドルトン氏)も同様、ウィリアム王子との婚約が発表された後、バッキンガム宮殿で行われた公式インタビューがテレビ放送されるまでは、沈黙を貫いていた。

 しかしマークル氏は、英王族と恋人関係にあった他の「一般人」とは違い、メディアへの露出経験が豊富で、ショービジネスの世界に慣れ親しんだ女性である。

 マークル氏が女優として最も成功を収めた役は、現在第7シーズンを放送中の法定ドラマ『スーツ』で演じたレイチェル・ゼインという気の強い女性だ。この他にも『フリンジ』、『CSI:マイアミ』、『ナイトライダー』、『キャッスル』といったテレビドラマで脇役を演じてきた。『モンスター上司』をはじめとする映画作品にも出演経験がある。

 女優業の他にも、TheTig.comというタイトルのライフスタイル紹介ブログ(今年4月に閉鎖。理由は説明されていない)を立ち上げたり、セレブとしての知名度を活かした人道活動を展開したりもしている。

 マークル氏は、国連ウィメンの「女性の政治参加とリーダーシップのためのアドボケイト」として男女平等を訴えてきた。2015年に数々のスターを招いて開催された国連ウィメンのイベントでは、「女性であり、フェミニストであることを誇りに思う」と述べた。

 国連ウィメンは先月27日遅くに声明を発表し、「彼女が新たに担う重要な公的役割においても、その知名度と発言力を活かし、引き続き男女平等の推進をサポートしてくれることを信じ、期待を寄せている」とメッセージを送った。

 マークル氏は女子教育と月経への偏見に関する記事を『タイム』誌に寄稿し、さらに慈善団体ワールド・ビジョン・カナダのグローバル大使としてルワンダを訪問した。そこで貧困を直に見せようと母親に連れられ、ジャマイカのスラム街を訪れた時の様子を話し、このような体験が自身の社会意識を形成し、チャリティー活動に至っていると語った。

 ヘンリー王子が主導する負傷兵のためのスポーツイベント、インビクタス・ゲームが9月に開催され、王子とマークル氏が手を繋いで登場した。二人揃って公の場に姿を見せたのは、この時が初めてだ。

 二人はジーンズスタイルのカジュアルな服装で、テニスの試合会場に現れ、笑顔で会話を楽しんでいる様子だった。その数日後には、同イベントの開会式を観覧するため、マークル氏とその母親を伴い特別席に入ったヘンリー王子が、マークル氏の頬にキスする場面が写真に収められている。

 マークル氏によると、ヘンリー王子とは2016年の7月に友人を介して出会った。二人の熱愛報道が出るまでの数か月間は、ひっそりとデートを重ねていたと言う。

 その後、報道があまりに加熱した結果、ヘンリー王子はメディアに過剰な報道を控えるよう釘を刺すため、マークル氏との関係を正式に認めるというこれまでにない行動に出た。王子は王室を通して声明を発表。報道陣に対し強い語調で、これ以上恋人のプライバシーに立ち入らないよう求めた。さらにインターネット上の一部のコメントについて、「性差別、人種差別以外の何物でもない」と批判し、「人種差別をほのめかす」いくつかの記事は一線を越えていると指摘した。

 タブロイド紙の中には、マークル氏がアフリカ系アメリカ人の母と、白人の父を持つことに触れ、混血という人種的なバックグラウンドに言及するような記事を掲載したものがあった。

 マークル氏自身は黒人と白人両方のルーツを持つことについて、成長の過程においても、ハリウッドでのキャリアにおいても受け入れるようになったと明言している。

 3月に行われた『アルーア』誌のインタビューにおいて、マークル氏は、大学時代に人種について学んだことをきっかけとし、「黒人のコミュニティにいると肌の色が白すぎるような気がして、白人のコミュニティでは黒人の血が混ざりすぎている気がするという感情を何と呼ぶのか、初めて理解できた」と述べた。

 さらに彼女は、「キャスティングの時には、『人種を特定できない』女優として選ばれてきた」と言う。

 マークル氏は1981年8月4日、臨床療法士の母と、テレビ番組のライティングディレクターの父との間に生まれた。ロサンゼルスで育ち、現在はトロントで暮らしている。

 カトリック系の女子高を卒業後、イリノイ州のノースウエスタン大学に進学し、そこで演劇と国際関係を学んだ。

 2011年には映画プロデューサーのトレヴァー・エンゲルソン氏と結婚するも、2年後に離婚している。

 以前にも、英国の王族がアメリカ人、あるいは離婚歴のある女性と結婚しようとしたことがあった。エドワード8世が王室の制度を尊重するか、2度の離婚歴を持つ令嬢ウォリス・シンプソン氏との結婚をとるか選択を迫られ、1936年に退位したのは有名な話だ。

『ヴァニティ・フェア』のインタビューでマークル氏は、自身の恋愛に世界の注目が集まったところで、動揺することはないと断言した。

 マークル氏は、「私は今も私のまま、何も変わっていないし、誰と付き合うかで自分の価値が決まるなどと思ったことはない」と言う。「親しい人たちは、私がどういう人間かよく知った上で、私を支えてくれている。それ以外の誰が何を言おうと、雑音に過ぎない」。

By SYLVIA HUI, London (AP)
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP