「大谷はこの冬最大の大物」加熱する現地メディア報道 各地から熱烈ラブコール

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 ポスティングシステムを利用し、メジャーリーグを目指すことを発表した日本ハムの大谷翔平選手に、名だたる球団が熱いラブコールを送っている。メジャーリーグでも珍しい二刀流が売りの日本の若きスターは、米メディアから「この冬最大の大物」と呼ばれており、その移籍先に関心が集まっている。

◆アメリカでは二刀流はダメ?成功した選手も
 米メディアは、今回のメジャー挑戦が2つの点で異例だとしている。その一つが、大谷選手の二刀流だ。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、大谷が日本のベーブ・ルースと呼ばれ、日本ハムでも投打に活躍してきたと解説するが、アメリカでの二刀流はかなり難しいという見方を紹介している。メジャーでは、先発投手は高級グラスのように大切にケアされるのが慣例で、二刀流により、数百万ドルが載ったスターの肩、ひじ、体幹の筋肉などに負担をかけることは球団としては避けたいのだという。また、レギュラーシーズンの試合数は日本よりも多く、移動時間も長い。投手のローテーションも日本のパ・リーグ6人に対しメジャーではほとんどが5人である。こういったことから、テキサス・レンジャーズのジェネラルマネージャー、ジョン・ダニエル氏は、二刀流は可能ではあるが、肉体的、精神的に、独特の技能や知識が必要とされると述べている。

 NYTは、ベーブ・ルースをはじめ二刀流で成功した選手のほとんどが、かなり昔の選手だと指摘する。しかし、タンパベイ・レイズのブレンダン・マッケイ選手のように、二刀流を続けて結果を出している選手もいるとする。ニューヨーク・メッツのジェネラルマネージャー、サンディ・アルダーソン氏は、野球はエンターテイメントなのだから、他にはないポテンシャルを持つ選手の才能を伸ばしてやることが、チームやファンにとってエキサイティングな経験になるとし、大谷の二刀流継続は素晴らしいものになると期待している。

◆2年待てば100億越えでも、大谷は今メジャーを目指す
 もう一つ注目されているのは、大谷側が金銭面を重視していない点だ。23歳の大谷は、メジャーリーグの規定により海外アマチュア選手と見なされマイナー契約となる。USAトゥデイ紙によれば、契約金は最高でも350万ドル(約3億9000万円)ほどと少ない。来季はメジャーでプレーしても年俸は54万5000ドル(約6100万円)程度と見られているが、2年待って25歳でメジャー契約をすれば1億ドル(約112億円)の価値があるのではないかとNYTは述べている。

 大谷選手の代理人、ネズ・バレロ氏は、各チームに選手の育て方、メディカル・スタッフ、球団施設、大谷をチームに馴染ませるための体制、二刀流選手としての大谷への評価など、細かい情報提供を求める手紙を送っており、金銭面での条件は提示しないことも求めている。USAトゥデイは、大谷が求める要素は、金を越えたところにあると述べるが、実際に獲得するのは、日本人選手の在籍経験、資金面、二刀流のチャンスなどを考慮し、テキサス・レンジャーズ、ロサンゼルス・ドジャース、ニューヨーク・ヤンキース、シアトル・マリナーズ、タンパベイ・レイズ、シカゴ・カブスのいずれかではないかとしている。

◆うちに来て!獲得目指し、ファンもメディアも熱いラブコール
 ほぼ争奪戦となりそうな大谷のメジャー移籍だが、ニューヨーク・デイリー・ニュースは、ヤンキースの本拠地として、大谷獲得に自信満々の記事を掲載している。同紙は、日本のベーブ・ルースなら大谷はブロンクスでプレーしなければならないとし、二刀流スターを目指す大谷には、ニューヨークで多くのスポンサー契約を結ぶチャンスもあると述べる。また、松井秀喜や田中将大の成功、ローテーションの空き、指名打者のチャンス、充実した施設、将来性、そして大谷選手は興味がないかもしれないが、豊富な資金力で将来的には多額の金を支払うことができると豪語している。

 一方、長年ライバル関係にあるヤンキースとは対照的に、契約金が余り出せないことを認めるボストン・レッド・ソックスのファンサイト『Over the Monster』は、大谷選手がお金を優先していないことは、我がチームにもチャンス有りだと期待を寄せる。同サイトは、レッド・ソックスは間違いなくリーグ一有名な歴史を持ち、ファンの猛烈さでも有名だと述べ、大谷選手が歴史ある球場、大観衆、そしてメディアの注目を求めるなら、ぜひアメリカでの出発点にしてほしいとしている。

 日本時間の12月2日には大谷選手のポスティング申請の手続きが行われる予定となっており、各球団の激しい争奪戦が本格化しそうだ。

Text by 山川 真智子