「卑猥な表現」 ジャスティン・ビーバーの『デスパシート』、マレーシアで放送禁止に

Jack Fordyce / Shutterstock.com

著:Mong Palatino(Global Voices Regional Editor for Southeast Asia)

 マレーシアの国営ラジオ局やテレビチャンネルは今後、人気ポップスの「デスパシート(Despacito)」をプレイリストから排除する。同国のコミュニケーション・マルチメディア省が「デスパシート」の歌詞に卑猥な表現があり、公共放送にふさわしくないと判断したためだ。

 史上最高のストリーミング再生回数を誇ると言われる「デスパシート」は、プエルトリコの歌手ルイス・フォンシとラッパーのダディー・ヤンキーが制作し、ポップスターのジャスティン・ビーバーが参加してリミックスしたものだ。「デスパシート」はスペイン語で「ゆっくり」という意味で、恋愛関係をうたった曲だ。

 この曲の放送禁止を声高に要求しているのは野党「Parti Amanah Negara(国家誠信党)」の女性派閥だ。同派閥は、与党連合に複数あるイスラム強硬派よりも進歩的な存在になることを目標に掲げている。党の芸術文化委員長、アトリザ・ウマール氏は、その立場を次のように説明した

「エンターテインメントを享受する権利は尊重するが、エンターテインメントが人々を腐らせるのではなく、良くしていくために、より明確なガイドラインが必要だ」

 しかし、同団体は、歌詞のどの部分を問題視しているのか、という点については言及しなかった。

 コミュニケーション・マルチメディア相のサレー・サイード・ケラク氏が、今後マレーシア国営ラジオおよびテレビ(RTM)が番組内で「デスパシート」を放送することはない、と発表したのち、アトリザ・ウマール氏率いる同党は、この判断をマレーシアの女性と母親にとって前向きなニュースとして歓迎した

「……我が国の国民がそうした(禁止を求めた)のは、エンターテインメントを否定しているのではない。ただ、有害な要素が腐敗し、それが現代の若者にとってスタンダードになることを望まないのだ」

 近年、イスラム教徒が大多数を占める同国の与党連合は、国家統治にもイスラム教を厳格に適用するべく、保守的な意見を強めている。こういった保守層は、国家が社会にとって「有害」と判断した映画や音楽、そして書籍に対し、国家からの圧力を与えることに成功している。今月初旬にも、イスラム教穏健派を奨励するが、検閲で禁書に指定された。

 多くの政党がParti Amanah Negaraの女性派閥を支援しており、人民正義党のズライダ・カマルディン氏は、子供たちを「不適切な意図」から保護するため、楽曲選別の実施を考えていたほどだ。

「楽曲も映画同様に選別されるべきだ。そうすれば、放送されている曲は不適切な意味を持たない、と保証できる。民間の領域で放送されようと、それは構わない。私が話しているのは、公共放送でその曲が流される場合のことだ。そうなれば、そういった曲が子供たちの耳に届くことになる」

 国営放送で「デスパシート」を放送禁止する決定に対して、多くのアーティストやネットユーザーが批判の声をあげた。マレーシアの音楽バンド、ペーパーレーン・パーシュート(Paperplane Pursuit)のリードボーカルを務めるジョン・O氏は、なぜ「誰も理解できない」曲を排除するのか、とその根拠に疑問を呈した。

「自分に都合のいい世論に向けてお決まりの対応をする連中を優先し、正当なプロセスを無視すれば、いずれの業界にも勝ち目はない」

 ツイッター利用者の、@00Nuzaもまた、楽曲放送禁止の理論に疑問を呈した:

【NUZA:マレーシア人は、デスパシートの意味を理解することなく、ただ素晴らしい曲だというだけでそれを楽しんでいた。しかし、RTMが皆にそれが「汚い」と教えたのだ。】

 マレーシアの新聞「ザ・スター(The Star)」でコラムニストを務めるPhilip Golingai氏は、彼の同世代が1980年代から1990年代にどのように音楽に耳を傾けていたのか、について記述している。当時も下品だと解釈できる歌詞も含まれていたが、何ら害を生むことはなかったと彼は記す。

 他にも同じような内容の曲が放送を認められているのに、特定の曲を禁止するのは偽善なのでは、と指摘する者もいた。

【Latest on SAYS:完全にセックスを語る曲であるため、ラジオ放送を止めるべき20曲】

【Sumisha Naidu:実際「不適切」なのにマレーシアで毎日ラジオ放送されている曲を挙げていこう】
【NZMN:マルーン5の曲「アニマル」を忘れちゃいけない。「ベイビー、私は今夜あなたを食らう、捕まえて生きたまま食べてやる」】

「デスパシート」に不満を示した政党は野党であり、彼らが保守派層の支持獲得を狙っているのではないか、という疑問が多くあがっている。メディアアナリストのNiki Cheong氏は、これら野党グループがとる立場に失望している。

【Niki Cheong:RTMのデスパシート禁止に関する昨日のツイート、Amanahがこのような政治ゲームをするのは非常に悲しい。マレーシアが切望する野党はいずこか?】

【Niki Cheong:検閲がマレーシアで再び顕在化している。これに非常に失望した@sallehsaid】
【Niki Cheong:はっきり言って、その曲は不快だ。だが、検閲で国は進歩しない…】

「デスパシート」はマレーシア国内放送の大部分を占める民間メディアではいまも放送中だ。

This article was originally published on Global Voices. Read the original article.
Translated by isshi via Conyac

Text by Global Voices

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