30℃以上の日にランニングしても大丈夫?

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著:Hannah Moirキングストン大学 Senior Lecturer in Health and Exercise Prescription)、 Chris Howeキングストン大学 Senior research technician)

 英国のほとんどの地域が熱波を経験していて、気温は32℃に達する。 英国の公衆衛生監視団(Public Health Watchdog)はアンバーヘルス警告を出して、より暑い気候では気をつけるように人々に助言している。 しかし、それはランナーにとってはどういう意味だろうか? 32℃はランニングをするのに暑すぎるといえるだろうか?

 英国の一部の地域では、気温が30℃以上に上昇すると、人々は熱気の中で走ることの安全性に疑問を感じるかもしれない。 しかし平均気温が25℃であるケニア、エチオピア、日本といった国で大会に出場している多くのランナーと一緒に、より暑い気候の中を走るのは珍しいことではない。

 熱気の中で走ることは、子供、老人、妊娠中の女性にとってはリスクである―しかし予防措置が取られていれば、30〜35℃という高温の中を走っても大丈夫だ。

 たくさんのマラソン大会が極端な熱気(35℃以上)の中で行われている。たとえばカリフォルニア州デスバレーで行われる135マイルのウルトラマラソン、「バッドウォーター(Badwater)」では、温度が50℃以上にまで上がることがある。 また、毎年行われる「マラソン・デ・サブルス(Marathon des Sables)」では、モロッコのサハラ砂漠を5日間にわたって横断し、気温は50℃にも達することがある。 この156マイルマラソンは、地球上で最も難しいレースと見なされている。 キングストン大学でマラソン・デ・サブルスやバッドウォーターといったイベントに備え、加熱室で走ったりトレーニングしたりしている人たちと過ごした私たちの経験から、十分な準備と水分補給があり、そしてどれだけ熱心に走っているかに敏感であれば、高温の中を安全に走ることは可能であることがわかった。しかし、これらのレースは多くの準備と順化が必要であり、徹底したトレーニングもなくそのような気温の中を走ることは、決して推奨されないということを頭に入れておくことが大事である。

マラソン・デ・サブルスは砂漠を走るイベントだ

◆備えあれば…
 30℃の熱気の中を走ることはリスクを伴い、脱水、過熱、筋肉痙攣、過度の発汗、頭痛、吐き気、疲労およびめまいの原因となることがある。パフォーマンスが低下する可能性があり、同じペースで走ることができなかったり、より穏やかな気温で走行した場合と同じだけの距離は走れないことがある。 また、熱気の中で運動すると、熱疲労や熱中症など、重大な健康上の問題が生じることもある。 しかし、自分の体に耳を傾け、分別を持って注意すればこういったリスクは避けることができる。たとえば水分を十分に摂取したり、日中の一番暑いとき(午前11時から午後3時)に走らないようにしたり、軽くて通気性のある服を着たり、通常よりもゆっくりとしたペースで走ったり、温度に順応したり(これには最大14日かかる)など。

◆身体は適応することを覚える
 熱気の中を走ることによって深部体温が上昇する。深部体温が37℃に保たれると身体の動きは最も活発になる。だから身体を冷やすために、汗を流して熱を蒸発させる。 発汗により血液からの水分が失われ、脱水症状が引き起こされる可能性がある。

 発汗を助けるために血管は膨張し、温度上昇を少なくしようとしてよりたくさんの熱を失うことによって、皮膚の表面により多くの血液が送られる。 だから暑くなると、赤くなったり血管が見えやすくなったりするのだ。 問題なのは、動いている筋肉に送られる血液が少なくなり、身体、特に心臓に負担をかけることである。 その結果、発汗によって脱水症状が引き起こされる可能性がある。熱気の中で運動すると、疲れて運動不能になり、ふだん、より涼しい気温で行っているようには運動できなくなる。

 環境温度が高ければ高いほど、中心の体温を維持するための発汗および熱損失に対する依存性が高くなる。 一般的に人々は暑い中で運動すると、1時間に最大1リットルの汗をかくが、暑さによっては4リットル以上の汗をかくこともある。

 しかし人間にとって最大の利点は、他の動物と比較して体温を調節する上でうまく設計されているということである。 このため、我々は熱気の中で長距離を走ることが可能になる。 高温に定期的に晒されることにより、身体は適応することを覚え、熱気の中走るというストレスや緊張を軽減することができる。 身体への適応に含まれるものは、発汗の割合と血量の増加、汗中の電解質(重要な塩類およびミネラル)の減少、休息の減少、中核体温の運動ならびに心拍数の低下および熱中での動作時の知覚された努力水準の増加である。 準備と常識があれば、高温下でも安全に走れるのだ。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by yoppo

The Conversation

Text by The Conversation