ブルーボトルコーヒーが感銘を受けた日本の喫茶店文化は、外国人にとってもノスタルジック

 ブルーボトルコーヒーというアメリカ・オークランド発のコーヒーショップをご存じだろうか。現在、日本は東京のみの出店で6店舗を展開しているが、2015年初めに1号店ができてから約2年とは思えない展開の速さである。しかしこのコーヒーショップの背景を知れば、日本でブルーボトルコーヒーが即座に受け入れられた理由がわかるかもしれない。

 創業者でCEOのジェームス・フリーマン氏は、ティーンエイジャーの時に訪れた日本、さらにはそこで触れた喫茶店文化に深く感銘を受け、そこから学んだことを現在の経営判断においても実践している、とエコファッションメディア『Citizens of Humanity』のインタビューで語っている。喫茶店は「野暮ったいしおしゃれではないが、どれも深く個々に寄り添った(パーソナルな)場所」であり、「こだわり(Kodawari)がある」と話している。氏は喫茶店文化に息づく日本の「こだわり」の精神や日本のホスピタリティを賞賛している。そんなフリーマン氏のコーヒーに対する「こだわり」は製品の質のみに留まらず生産工程やサービスにも及び、その姿勢がブルーボトルコーヒーの急成長の秘密ではないかと考えられる。

 外国人から見た日本の喫茶店文化について、CNNでは、古都として知られる京都における喫茶店文化を紹介している。フリーマン氏の「野暮ったい」という表現とは異なり、この記事では喫茶店独特の味わいを「レトロ」で「クール(かっこいい)」と表現している。また、喫茶店とブルーボトルコーヒーのようないわゆるサードウェーブコーヒーとの関係性にも触れており、どちらも「コーヒーを淹れることを芸術・職人技と捉え、サービスを重視し、細部までこだわる点」で共通すると説明する。サードウェーブコーヒーとは、生産過程全てに配慮をした職人技的コーヒーのことを指しており、その先駆者としてブルーボトルコーヒーの名前がよく挙げられる。

 Vox Mediaの食に関するメディアブランド『EATER』の記事では、喫茶店を「タイムカプセル」と表現しており、CNNの記事と共通して懐かしさというものを喫茶店に見出している。喫茶店とは独自の雰囲気と世界観を持っており、昔の日本を知らない若者や外国人でも喫茶店からノスタルジーを感じ得る点で一つの文化を形成していると言えるのではないだろうか。

 私たちには当たり前のように生活の中に存在する喫茶店も、外から見ると中々に奇妙で不思議な文化である。そして、思わぬところで喫茶店文化を通じて垣間見える日本ならではの精神性が人を動かし、外の世界に影響を与えている。2020年の東京オリンピックに向けて様々な場面で掲げられる「おもてなし」というスローガン。意外なところでそれはすでに発信されているようだ。

photo via flickr/Saaleha Bamjee

Text by 大西くみこ