ケリー米国務長官来日 日本各紙の外交評価の違いとは

 ケリー米国務長官は14~15日にかけて来日し、岸田外相・安倍晋三首相らと会談した。
 主な議題は、緊張を高める北朝鮮への対応や、尖閣問題、米軍基地についてなどだった。

【対北朝鮮】
 安倍首相は、「北朝鮮が挑発行為を繰り返しても何ら利益にならないことを理解させることが必要」と述べ、制裁措置など断固たる対応を続けることを強調した。
 ケリー長官は、中韓両国と朝鮮半島の非核化を目指す点で合意したことを紹介。日米間でも高級実務者協議を行い、日米韓での協力を進めていくことを確認した。さらに、日韓に対して、北朝鮮からの防衛義務を果たす意思も確認した。
 北朝鮮に対しては、非核化交渉の用意があると述べ、対話の可能性を示している。

【対中国】
 ケリー長官は、尖閣問題について、日中間の平和的解決への期待を表明した。また、安保条約の適用をはじめ米国の立場に変更はないことを確認したうえで、尖閣諸島は日本の施政下にあり、現状を変えようとする一方的な行為に反対すると明言している。
 日本側も、尖閣諸島について譲歩することはないが、中国とは大局的見地から対話をはたらきかけるとしている。

【米軍基地】
 双方は、普天間飛行場の移設、嘉手納以南の土地の返還計画が着実に進展したことを評価。日本は海兵隊のグアム移転を着実に進めるよう求め、ケリー長官は努力していると応えた。

【各紙の評価】
 日本各紙(朝日・読売・産経)は、上記議題について紹介した上で、それぞれの視点から今後の課題について論じている。

 朝日新聞は、東アジアの安定を求める姿勢から、「米中が連携を強化し、北朝鮮を制御せよ」と主張している。背景として、両国とも朝鮮半島の安定化を望む点で一致しているにもかかわらず、疑心暗鬼になっていたと指摘。今回の会談でそれが解決したとまでは言えないものの、北朝鮮の暴走を唯一止められる中国と、唯一中国の背中を押せるアメリカが、連携すべきと結んでいる。

 対して産経新聞は、アメリカの「対中観」が不明確な点に、不満をあらわにしている。ケリー長官が、南シナ海の中国の動きへの対抗手段など具体的課題に触れなかった点を指摘し、(経済的観点からの)中国への配慮でないことを願う、と辛辣だ。

 読売新聞は、日米の連携を一段と強化し、北朝鮮や中国に効果的に対応すべしという姿勢だ。北朝鮮に対しては、威嚇外交を成功させないためにも、具体的行動がないまま経済支援を行うべきではないと強調。その際は、日米中韓の協調が重要とも説いている。一方、尖閣問題に関しては、国際法に反する強引な手法で海洋権益拡大を図る中国の手法を非難。この点に関する確認を、今回の会談でケリー長官から引き出せたことを評価し、今後も日米協調を高めていくべきと主張している。

 総じて、日本の安全保障・外交に関し、各紙が何を重視し、何を懸念しているかが、改めて明らかになったといえる。

Text by NewSphere 編集部