黒田日銀新体制発足 各紙が提起する期待と課題とは?

黒田日銀新体制発足 各紙が提起する期待と課題とは? 20日、黒田東彦氏が日本銀行の第31代総裁に就任した。副総裁には岩田規久男氏、中曽宏氏が就任した。日本各紙(朝日・読売・産経)は、新体制発足にあたり、日銀への期待と課題を論じた。

【日銀への期待】
 読売・産経両紙は、新体制の日銀に対し、デフレ脱却に向けた具体的で迅速な取り組みを求めている。黒田氏が国会での所信表明で、「デフレ脱却に向けてやれることは何でもやる」と、強い決意を表明していることに対する期待といえる。特に産経新聞は、“明確な意思表示は市場の期待を膨らませる”とし、引き締め優先と見られてデフレ脱却を果たせなかった「白川日銀」と対比している。 黒田総裁は既に、2014年実施予定の「無期限緩和」の前倒しや、購入国債の拡大などに言及しており、いつ何を実行に移すのかが注目される。
 また両紙は、国際金融畑を歩んできた黒田総裁の経歴から、諸外国からの“円安誘導”批判に対し、理解を得られるよう、発信力を生かしてほしいと求めている。

【日銀の課題】
 朝日新聞は、“デフレファイター”黒田総裁に対し、バブルへの警戒を怠るな、と警告している。日銀が財政の尻拭いをしていると見られてしまえば、国債の下落を招き、国債を保有する銀行の経営が悪化し、国民経済を大きなリスクにさらすことになる、と危惧している。黒田総裁が「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の姿勢であることは認めた上で、なお細心の注意を求める論調だ。この点については読売・産経両紙も懸念している。
 さらに朝日新聞は、緩和の終了・中止をどうするか、という「出口」戦略も不可欠だと主張している。
 
 一方読売新聞は、黒田総裁らと審議委員の意見のズレから、“決められない日銀”になることを危惧している。産経新聞は、政府とのコミュニケーションに齟齬が生じる可能性も懸念している。同紙は、白川総裁が独立性にこだわるあまり政治との信頼関係が築けなかったとみて、黒田総裁はその轍を踏まないよう求めている。

 最後に、各紙とも、日本経済の再生には、日銀だけでなく政府の成長戦略・財政赤字削減努力が必要だと述べ、安倍政権の責任にも言及している。

Text by NewSphere 編集部