中国の国防費は日本の2.4倍…日本各紙の「処方せん」の違いは?

 中国の国防費が増加している。2013年予算案では、前年実績比10.7%増の約11.1兆円となっている。これは日本の国防費の約2.4倍だ。国防費の2桁増はほぼ20年以上続いている(2010年を除く)。

 この事実に対して、日本各紙は一様に懸念を表明している。ただし、そこから導かれる主張は異なる。朝日・読売はあくまで中国に自制を求める姿勢なのに対し、産経は日本に対して対中抑止を強めるよう求めている。
 
 各紙が指摘する懸念点は主に3つある。

 まずは習近平総書記ら次期指導部の言動だ。「中華民族の偉大な復興」を唱え、頻繁に軍への視察を行っている習近平氏には、朝日新聞も強い懸念を表明している。全人代の政府活動報告でも、「国家の海洋権益を守っていく」と強調されており、対外強硬姿勢が強まる傾向は最も懸念されている。実際、次世代ステルス戦闘機の開発や空母の就役・配備などが進められている。産経新聞はこれらを受けて、中国が“尖閣諸島を力ずくで奪おうとする”意思は確実になったと危機感をあらわにしている。
 
 次に国防費の不透明性だ。中国は国防費の内訳を公開しておらず、兵器やサイバー攻撃などの研究開発費は含まれないと指摘される。産経新聞によると、実際の軍事費は公表の1.5~3倍にのぼるという。読売新聞は、内訳や装備導入計画の公開を求めている。

 最後に、指導部が軍を統制できていない可能性だ。1月に日本の自衛艦が中国艦から「ロックオン」された事件では、当初政府が「情報を把握していない」と述べていたことから、軍の独断が疑われている。この事件をめぐって、朝日新聞は中国側に“しっかり統制するよう求める”と述べた。一方読売新聞は、緊急連絡体制構築のため、日中協議を再会するよう両国に求めた。

 これらの懸念を踏まえたうえで、各紙の結論は異なる方向に向かった。朝日・読売は、中国の軍拡は「環境問題、格差、汚職などで高まる国内の不満をそらすため」だと断じ、そのような危険な手法ではなく、腰を据えた対処を求めた。
 一方産経は、中国の脅威を指摘したうえで、日本に対し、日米同盟の強化、ASEAN諸国・インドなどの支援を通じ、「(力ではなく)法の支配」という価値観を共有する国々と、対中抑止の輪を広げよと主張している。

Text by NewSphere 編集部