北朝鮮ミサイル発射成功―集団的自衛権をめぐり各紙の見解分かれる―

 12日午前9時51分ごろ、北朝鮮が「人工衛星」と称するミサイルが発射された。ミサイルは沖縄県上空を通過。3つに分離し、それぞれ黄海、東シナ海、 フィリピンの東300kmの太平洋上に落下した模様。日本政府は、いずれも予告区域内の洋上に落下したと推定している。日本の領土内への落下物は確認され ておらず、破壊措置は実行されなかった。
 各紙ともに、北朝鮮に対する強い非難と、国連安保理における制裁措置強化を求めている。日本の集団的自衛権をめぐる見解については相違がみられた。なお、海外紙との違いとしては、今までの制裁が全く機能していない現実への危機感と対策への言及が少ないといえる。

 朝日新聞は、「世界の平和と安定を損なう蛮行」と断じ、強く抗議するとした。国威発揚、体制固め、そしてアメリカとの交渉を有利に運ぶためのミサイル技術向上が目的と分析。核兵器の小型化とともに、国際社会にとっての深刻な脅威になると懸念している。4月に北朝鮮のミサイル発射に対し議長声明を出して警告した安保理に対しては、制裁措置強化に反対する中国の姿勢を非難した。具体的な制裁への言及はなく、米・中、日本と関係国の「緊密な連携」を求めるにとどまった。
 日本に対しては、軍事的な対抗措置を求める動きを牽制しつつ、「粘り強い外交努力」「冷静な議論」を望むという主張を述べた。

 読売新聞は、発射を禁じる安保理の決議を「愚弄する暴挙」と強く非難した。安保理には速やかな制裁措置強化決議を求め、一定の効果を挙げているイラン制裁に準じるよう主張。特に拒否権を持つ中国の反対姿勢に対しては、北朝鮮が態度を改めない一因として批判している。また今回の発射・物体の起動投入成功により、北朝鮮の技術力が向上していることに懸念を表明した。
 こうした事実を踏まえ、日本に対しては、過去の反省を生かした情報伝達・発表体制の刷新については評価しつつ、今後の日米同盟の強化と、集団的自衛権行使を可能にするよう求めた。

 産経新聞は、他紙の2倍の長さで社説を掲載した。北朝鮮に対しては、「東アジアの平和と安定を脅かす暴挙」と非難。さらなるミサイル発射や核実験の可能性に備え、安保理に制裁強化・早急な実行を求めた。ここで、安保理が現在課している制裁を整理し、ミサイル関連などの武器禁輸、貨物検査強化、金融支援禁止などを挙げた。強化の方向としては、船舶への臨検実施などの本格制裁を主張した。また日米韓各国独自の制裁も必要とし、特にアメリカには金融制裁復活を強く求めた。一方、こうした動きを阻みかねない中国の食料・エネルギー支援などは「暴挙を黙認」と強く批判した。
 また独自の論点として、情報収集・分析における日韓の協力体制の不備を指摘している。破壊措置命令など日本の今回の迅速な対応には一定の評価を示しつつも、韓国からミサイルの探知・追尾情報が得られない現状を憂慮している模様だ(韓国側の申し入れで秘密情報保護協定締結が遅れているため)。
最後に、今後北朝鮮の脅威がますます高まることを踏まえ、「アメリカへむかうミサイルを日本の判断で撃墜するため」の集団的自衛権行使を強く求めた。

Text by NewSphere 編集部