日銀、追加緩和決定―各紙はさらなる強化策を求める―

日銀 日本銀行は30日、追加の金融緩和を行うことを決定した。日銀が供給するお金の量を11兆円増やし、総額91兆円とする。加えて、企業や個人がお金を借りやすくなる、新しい融資制度を創設する。金融緩和措置は2ヶ月連続となる。さらに、政府と日銀が一体でデフレ脱却に取り組むという異例の共同文書も発表した。
 
 朝日新聞は、景気回復に対する政府の役割に焦点を当て、責任を果たすよう求めた。
 今回の緩和策は不況の根本的な解決策とはならず、景気回復には、政府による規制や制度の改革が必要だと論じた。理由として、実体経済の側に資金需要を生むような事業の盛り上がりが生まれないと意味が無いと指摘している。緩和策は現状維持の心理を助長する危険もあるという。
 また、背景にある、政府・与野党の日銀に対する緩和圧力を、打つ手がない状態での責任転嫁のようで「見苦しい」と断じている。政府が日銀との共同声明を出し、デフレを生みやすい経済構造の改革に言及したことは評価しつつ、実現可能かどうか疑わしい現状を非難した。特に、特例公債法案が成立せず歳出抑制の動きが広がり、アメリカで懸念される「財政の崖」と呼ばれる不景気になりかねない、と危険視している。「政治不況」を起こすな、と政府・与野党の対応を求めた。
 政治に対して期待できない現状を指摘しつつ、政治の力でしか変えられないこともあるというジレンマを抱えた主張である。

 読売新聞は、政府・日銀連携による効果的な景気対策の実施を求めた。
 今回の日銀の追加緩和策については、企業の借入を促進する新制度案もあり、好意的に評価している。その背景にある、デフレ脱却が遅れている現状に対する日銀の危機感を指摘。2014年に消費増税が控えていることもあり、社会保障・税改革を進めつつも、デフレ脱却のために政府も力を尽くせと主張している。インフレ目標導入や、円高是正のための外国債導入など、日銀との強調が重要だとしている。さらに、成長分野での新産業育成・雇用創出や、原発再稼働による電力の安定供給を求めた。
 景気回復の文脈で原発再稼働に言及するのは乱暴な気もするが、新聞としての姿勢は一貫している。

 産経新聞は、日銀の対策は不十分であり、円高是正のための強力で具体的な措置を求めた。
 背景として、海外情勢の悪化と円高が原因で輸出が減少、日本経済の現状が非常に厳しい状況に置かれている現状を分析。実体経済を反映しない円高が、中小企業を中心とした輸出産業にダメージを与えていると指摘した。さらに物価についても、事前の見通しからマイナスとなり、デフレ状態が続いていると判断している。こうした中、今回の追加緩和策は従来の対策の延長に過ぎず、効果は不透明だと疑問を呈している。円高是正のため、「日銀による外国債券の購入」を検討するよう強く求めている。日銀・財務省は日銀法に違反するとの認識だが、可能という解釈もあるため進めるべきだという主張だ。
 3紙の中では最もラディカルな外債購入という手段を主張している。専門家でも意見が分かれるテーマで価値判断は正直難しいが、経済回復のため円高・デフレ是正措置が必要という主張は正論だ。

朝日新聞
追加金融緩和―政治不況を起こすな(10月31日)

読売新聞
追加金融緩和 政府・日銀は効果的な連携を(10月31日)

産経新聞
追加金融緩和 なぜ円高是正踏み込まぬ(10月31日)

<参考リンク>
金融緩和の強化について
(日本銀行)

Too Little, Too Late, Again 片岡剛士
(SYNODOS JOURNAL)

政府・日銀の共同文書 ― 再びボールは政府のもとに
(中西健治)

Text by NewSphere 編集部