デモ、領海侵犯…問われる日本の対中外交・国防

 9月10日、日本政府は尖閣諸島主要3島の国有化を決定した。これまでは貸借という形だったが、石原東京都知事の購入計画表明を受け、地権者からの購入に至った。これに対し、領有権を主張する中国は反発を強め、反日デモや監視船による領海侵犯などが起きている。
 一連の事態に対し、中国政府の姿勢、日本政府の中国に対する外交方針・国防方針という論点があげられる。国内各紙が展開している社説を比較する形でまとめた。

朝日新聞は、一貫して「中国の自制を求める」という主張を展開している。尖閣国有化に対し、反日デモが続発、さらに監視船による領海侵入もあったことを「異常な事態」と断言した。背景として、国有化に対する認識の違いがあると分析した。つまり、日本政府は摩擦を避けるため東京都に代わって購入したという見解だが、中国側は自国領土をカネで買われたとみているのではないか、ということだ。さらに、中国共産党が指導部交代の時期であること、自民党党首候補の安倍氏・石破氏らが尖閣実効支配強化を訴えていることも影響しているとみている。日本政府に対しては、尖閣諸島の領有根拠を国際社会へ主張することが必要だとしている。最後に、日中両国は大局を見渡し「頭を冷やして考えるべき」だと主張している。

読売新聞は、中国政府を強く非難するとともに、日本政府に対しても毅然とした対応を求めた。尖閣国有化に対し、中国の約100都市でデモが起き、日系企業が襲撃されていることを「憂慮すべき事態」だと断言した。さらに、過去初めて監視船6隻が日本の領海に侵入してきたことや、商務省幹部による日本製品不買運動容認発言などを強く非難した。中国政府には事態の沈静化と邦人保護を求め、日本政府には海上保安庁による領海警備と領有権に関する国際社会への主張強化を求めている。

産経新聞は、中国の監視船による領海侵犯を「許し難い挑発行為」と強く非難した。日本政府に対し、短期的には、大使への抗議以上の対抗措置を主張し、長期的には、国連海洋法条約に基づく外国公船排除のための法整備を求めた。自衛隊による海上警備行動の必要性にも、主要紙の中で唯一言及している。また、中国の威嚇・恫喝に等しい一連の動きの原因は、日本政府の「事なかれ主義外交」にもあると批判した。尖閣への施設建設や自衛隊常駐といった案も含め、領土防衛体制の強化を主張している。

朝日新聞
尖閣と中国―強硬姿勢は何も生まぬ(9月13日)
反日デモ―中国の自制を求める(9月16日)

読売新聞
尖閣国有化 中国の圧力外交は行き過ぎだ(9月14日)
反日過激デモ 中国政府はなぜ容認するのか(9月17日)

産経新聞
尖閣購入決定 中国の実力行使に備えを(9月12日)
中国の尖閣侵犯 公船排除の法整備を急げ(9月16日)

Text by NewSphere 編集部