「不振だったスバルWRX」が復活 米国で6月販売252%増、再評価の理由とは

Subaru of America, Inc.

 スバルのスポーツセダン「WRX」の販売が、アメリカで急増した。6月の販売台数は1233台で、前年同月比252.3%増を記録した。前年同月が350台と低水準だった反動も大きいが、1~6月累計でも前年同期比10.5%増となっている。

 転機となったのが、2026年モデルでの値下げと、エントリーグレード「Base」の復活である。ただし、海外メディアの試乗レビューからは、安くなったことだけが支持されたわけではないことが見えてくる。手頃な価格で6速MTと四輪駆動を楽しめるという、WRX本来の立ち位置への回帰が評価されているようだ。

 主要なレビューは、イギリスのオールトンパーク・サーキットやウェールズの公道を舞台にした同じ試乗会で行われたものだが、各誌の評価はおおむね一致している。

◆値上げで販売41%減 価格を見直し
 スバルは2025年モデルでWRXを値上げし、エントリーグレードもラインアップから外した。2025年の販売は前年比41%減まで落ち込んだ。

 米カー・アンド・ドライバーは、価格上昇によってWRX本来の購入層とのミスマッチが生じたことが、販売低迷の一因になったと分析している。

 スバルは2026年モデルで方針を転換し、Baseを復活させるとともに、ほかのグレードも一斉に値下げした。Baseの車両価格は3万2495ドルで、配送手数料を含めても3万3690ドル。2025年型の最終的な最廉価モデルより5230ドル安い。配送手数料を除く車両価格ベースでは、Premiumが3755ドル、Limitedが3155ドル、GTとtSが2710ドル引き下げられた。

◆「安いだけではない」Baseが高評価
 各誌が注目したのは、Baseが装備を極端に削った廉価版ではないことだった。

 2.4リッター水平対向4気筒ターボエンジンは上位グレードと同じ271馬力を発揮し、6速MTと四輪駆動も標準装備する。さらに、18インチアルミホイール、夏用パフォーマンスタイヤ、スポーツチューンドサスペンション、11.6インチディスプレイなども備える。

 上位のPremiumとの主な違いは、前席シートヒーターやフォグランプ、後席用USB端子などだ。カー・アンド・ドライバーは、上位グレードの装備がなくてもほとんど不満を感じなかったと評価。米モータートレンドも、Baseは「安価な代替品」ではなく、WRXらしい走りをそのまま味わえると評した。

◆希少なMT×四輪駆動 速さより運転の楽しさ
 WRXの価値を高めているのが、市場での希少性だ。新車市場でMTを選べるスポーツセダンは減少しており、比較的手頃な価格で6速MTと四輪駆動を組み合わせた4ドア車となると、選択肢は限られる。

 英トップ・ギアは、控えめな出力と安定性の高い四輪駆動により、スポーツ走行に不慣れな人でも扱いやすいと評価。一方で、経験豊富なドライバーにも、限界を探りながら走らせる楽しさがあるとした。

 各誌とも、271馬力という数字を圧倒的な性能としては紹介していない。モータートレンドは、直線での速さよりも、ドライバーに自信を与える落ち着いた挙動を評価した。米ロード&トラックも、エンジンの性能を引き出すには回転数を保ち、積極的にシフト操作する必要があると指摘。ドライバーが操ることで楽しさが生まれる点をWRXの魅力としている。

◆弱点はあるが「買えるWRX」に回帰
 もちろん、不満点もある。複数の媒体が、サーキット走行では標準ブレーキが熱の影響を受けやすいこと、エンジン音が控えめなこと、11.6インチの車載システムの反応が遅いことを指摘した。

 それでも各誌の結論はおおむね共通している。2026年型WRXは、最高性能を追求したスポーツカーではない。しかし、手が届く価格でMTと四輪駆動を備え、日常でも使えて、運転する楽しさを味わえる。

 6月の販売急増の背景には、値下げとBaseの復活があるとみられる。ただ、海外レビューから浮かび上がるのは、単なる安売りによる回復ではない。WRXは「買える価格のWRX」という原点に戻ることで、再び選ばれ始めたようだ。

Text by 白石千尋