日本の軽トラ、米国で「働く車」に 大型ピックアップの国で広がる実用需要

JOHN LLOYD / flickr

 日本の軽トラックが、アメリカで「働く車」として再評価されている。小さな車体に荷台を備えた軽トラは、日本では農作業や配送、地域の足としておなじみの存在だ。一方、フルサイズのピックアップトラックが幅を利かせるアメリカでは、長らく異質な存在だった。

 だが近年、複数の州で軽トラなどの小型輸入車を公道で使えるようにする動きが相次いでいる。背景にあるのは、愛好家の人気だけではない。大型ピックアップの高騰、都市部での取り回しの悪さ、農家や小規模事業者にとっての実用性が、軽トラに新たな価値を与えている。

◆アラスカで公道登録が可能に
 米アラスカ州では7月、製造から25年以上たった軽トラックなどの小型輸入車を、州内で登録・名義取得できるようにする法律が成立した。地元メディアのアラスカズ・ニュース・ソースによると、新法SB239により、軽トラなどは、要件を満たせば公道走行可能な車両として扱われるようになった。

 同メディアに登場する1995年式スズキ・キャリイの所有者は、買い物からキャンプまで軽トラを日常的に使っているという。荷台にはキャンプ用品を積み、Starlinkや荷台テントを持ち出すこともある。所有者は、「フルサイズのアメリカントラックでなくても、いろいろなことができる」と語っている。

 アラスカといえば、雪、広大な土地、アウトドア、大型車というイメージが強い。だからこそ、その土地で日本の小さな軽トラが実用車として受け入れられている点は興味深い。単なる趣味車ではなく、「必要十分な道具」として見られているのだ。

◆テキサスやバーモントでも制度整備
 軽トラを認める動きは、アラスカだけではない。大型ピックアップの本場ともいえるテキサス州でも、2025年に軽自動車や軽トラなどの小型車を公道で使えるようにする法律が成立した。米自動車メディアのカー・アンド・ドライバーによると、SB1816の成立により、テキサス州では軽自動車や軽トラを合法的に名義取得・登録し、運転できるようになった。法律は「軽自動車」という言葉を直接使うのではなく、「ミニチュア車両」という広い枠組みを設けている。

 バーモント州でも制度の明確化が進んだ。地元テレビ局WCAXによると、同州では農場や農村部で軽トラへの関心が高まっている一方、登録をめぐる法的なハードルがあった。2026年に成立した自動車関連法の改正は、こうした不明確さを解消し、登録しやすくする狙いがある。

 オレゴン州でも今年1月、軽トラを公道登録できるようにする超党派法案が提出された。交通政策メディアのStreetsblog USAは、都市部では狭い路地での配送、農村部では農作業用の小型トラックとして需要があると指摘している。軽トラは、アメリカの異なる地域事情にそれぞれ別の形で合っている。

◆「輸入できる」と「走れる」は別問題
 ただし、アメリカで軽トラをめぐる制度は単純ではない。製造から25年以上たった外国車は、連邦自動車安全基準を満たしていなくても輸入できる。一方で、実際に公道で走れるよう州内で登録できるかどうかは、州ごとの制度に左右される。

 そのため、連邦法上は輸入できても、州の登録制度上は扱いが不明確だったり、登録が認められなかったりするケースがある。ニューヨーク州でも、軽トラの登録を認めるよう求める動きが出ている。地元紙タイムズ・ユニオンは、ニューヨーク州では25年以上前の車両であっても、軽トラの登録や名義取得が認められていないと報じている。

 同紙は、軽トラについて、一般的なSUVやピックアップより小さい一方で、荷物を運べ、狭い都市部の道路でも扱いやすいと紹介している。ニューヨーク市のように駐車スペースや道路幅が限られる場所では、小ささが欠点ではなく利点になり得る。

◆高すぎる大型ピックアップへの対抗軸
 軽トラが注目される背景には、アメリカの大型車社会への違和感もある。

 米シンクタンク、インディペンデント・インスティテュートは6月、軽トラ合法化を訴える論考を掲載した。同論考は、軽トラは馬力や最高速度こそ控えめだが、荷物を運べ、燃費も良く、小規模事業者や農家にとって合理的な選択肢になり得ると主張している。

 アメリカでは近年、ピックアップトラックやSUVの大型化・高額化が進んできた。もちろん、軽トラがその代替になる場面は限られる。高速道路での長距離移動や衝突安全性の面では、現代の大型車と同列には扱えない。

 それでも、すべての用途に大型ピックアップが必要なわけではない。近距離の配送、農場内や地域内での移動、狭い街路での作業など、軽トラが得意とする場面はある。アメリカ各州で進む制度整備は、軽トラを万能車として認める動きというより、用途を限れば現実的な選択肢になり得るという見直しだといえる。

◆「小さいこと」が価値になる
 アメリカでは長年、大きな車が実用性や豊かさの象徴とされてきた。だが、車両価格の上昇、都市部の混雑、燃費への関心を背景に、「小さいこと」そのものが価値として見直され始めている。

 日本の軽トラは、その象徴的な存在だ。安く、燃費がよく、荷物も運べる。見た目のかわいらしさも人気の理由だが、支持の中心にあるのは実用性である。

 アラスカ、テキサス、バーモント、オレゴン、ニューヨーク。各州の制度や進み具合はばらばらだが、軽トラを働く車として位置づけようとする動きは広がっている。日本では当たり前の小さな作業車が、アメリカでは大型車社会を問い直す存在になりつつある。

Text by 白石千尋