30年前のトヨタSUV、米で価格高騰 新車超え840万円の理由は?
1996年式トヨタ・4ランナー SR5 リミテッド(写真:Toyota)
アメリカで開催されたメカムオークションで、1996年式のトヨタ・4ランナー SR5が5万2800ドル(約840万円)で落札された。これは現行4ランナー SR5(4WD)の新車価格(4万4070ドル)を上回る水準だ。
4ランナーは、日本で販売されていた「ハイラックスサーフ」の北米向けモデルとして知られる。大衆向けSUVとして長年親しまれてきたモデルだが、なぜ30年前の車両が新車以上の価格で取引されたのだろうか。
◆走行距離はわずか約1万1000キロ
今回落札された車両は、トヨタが1996年から2002年まで販売した3代目4ランナー(開発コードN180)の初年度モデルだ。
最大の特徴は保存状態にある。走行距離は6954マイル(約1万1200キロ)にとどまり、塗装や内装、エンジンルームは新車当時の状態を色濃く残していた。オリジナルタイヤや純正アクセサリーも維持されており、コレクター市場では極めて希少な個体とみなされた。
オークション側は事前に3万5000ドル~4万5000ドルの落札価格を予想していたが、実際にはそれを大きく上回った。
もっとも、こうした価格が3代目4ランナー全体の相場というわけではない。カーバズによると、過去1年間に取引された同世代モデル140台の平均価格は約1万6460ドルだった。一方で、走行距離が少なく保存状態の良い個体は4万ドルを超える例もあり、今年4月には2000年式リミテッドが4万6555ドルで落札された。市場全体が高騰しているというより、「新車同然の極上車」に高値が付いている状況だ。
◆「壊れないオフローダー」というブランド価値
価格を押し上げる理由の一つが、3代目4ランナーが築いた高い評価だ。
搭載される3.4リッターV6エンジン「5VZ-FE」は耐久性で知られ、現在でも数十万キロ単位で走行する個体が珍しくない。アメリカでは長年にわたりオフロード愛好家やアウトドア愛好家から支持され、「壊れにくく維持しやすいSUV」として高い評価を受けてきた。
また、4ランナーは北米市場を代表するオフロードSUVの一つでもある。3代目モデルは堅牢なラダーフレーム構造と高い悪路走破性を備え、改造ベース車両としても人気が高い。現在でもアフターパーツや交換部品が豊富に流通し、整備ノウハウも広く共有されていることから、30年近く前の車であっても維持しやすい。この「今でも普通に使える旧車」であることが、高い評価を支える要因の一つとなっている。
一方で、長年にわたり実用車やオフロード車として使われてきたため、良好な状態を保つ個体は減少している。改造歴が少なくオリジナル状態を維持した車両は希少性が高く、コレクター市場でプレミアム価格が付く要因になっている。
◆背景にある「1990年代車ブーム」
近年は1990年代の日本車全般に対する評価が世界的に高まっている。
ザ・ドライブによると、子供の頃に1990年代車を見て育った世代が購買力を持ち始めたことで、当時のスポーツカーやSUVがコレクターズアイテム化しているという。
同誌は、若い世代のコレクターが1990年代車に価値を見いだし始めているとも分析している。
4ランナーもその流れの中にある。かつては実用車として使われていたSUVが、現在では保存状態やオリジナル性を評価されるコレクターズアイテムへと変わりつつある。
◆デジタル時代に求められる「アナログSUV」
今回の高額落札を語る上で見逃せないのが、自動車市場の価値観の変化だ。
現行SUVの多くはターボエンジンやハイブリッドシステム、大型ディスプレー、先進運転支援機能を搭載し、年々電子制御化が進んでいる。
それに対し、1990年代の4ランナーは機械的な構造が比較的シンプルで、自ら整備できる余地も大きい。ギア・パトロールは、こうした「アナログな運転体験」こそが現代の自動車にはない魅力になっていると指摘する。
30年前のトヨタSUVが新車を上回る価格で落札された背景には、信頼性や希少性だけでなく、デジタル化が進む時代に機械的な魅力を持つクルマを求める人々の存在がある。今回の4ランナーは、そうした価値観の変化を象徴する一台と言えそうだ。




