「日本の“軽”を欧州にも」ステランティス会長、EUに規制緩和を提言

Everyonephoto Studio / Shutterstock.com

 世界130か国以上で自動車を販売し、オランダに本社を置く自動車大手ステランティスのジョン・エルカン会長が、欧州でも日本の軽自動車のような、小型で安価な自動車を開発する必要があると発言した。軽自動車を含むマイクロカー市場は、欧州ではかなり小さいが、都市化の進展や電気自動車技術の進歩に伴い、成長機会が生まれると見られている。

◆車高すぎ! 大手会長がEUに苦言
 ロイターによれば、エルカン氏の発言の背景には、欧州での自動車価格の高さがある。同氏によれば、2019年に1万5000ユーロ(約250万円)以下で販売されたモデルは49車種あったが、現在はわずか1車種だけだという。2019年にその価格帯以下で100万台の車が販売されたが、現在では10万台にも満たないと述べている。

 同氏は、自動車のコスト増加は主に規制の影響によるものだと指摘。自社のエンジニアの25%以上がコンプライアンス(規制対応)だけに従事しており、付加価値を生んでいないと述べている。

 先月には、ルノーの最高経営責任者(CEO)とともに、欧州連合(EU)に小型車に対する規制の負担軽減を求めている。日本の状況を引き合いに出し、軽自動車は都市型自動車で、サイズやエンジンに制限はあるが、税金や保険料は安いと説明。欧州にもそのような車があってもいいはずだと主張している。

◆街中でもスイスイ マイクロカーに注目
 軽自動車は、世界的にはマイクロカーと呼ばれる排気量700cc未満のエンジンを搭載する車に分類される。最近発表されたマイクロカーに関する報告書によれば、欧州では、フランス、イタリア、ドイツがマイクロカー市場の上位を占めている。駐車スペースが少ない、狭い市街地でも容易に運転できるなどの理由で、個人的な移動手段として利用され、カーシェアでの利用も試みられているという。

 なかでも脚光を浴びているのが電動マイクロカーだ。自動車専門サイト『オートカー』の2023年の記事では、イギリスの代表的な日本車輸入業者のトルクGTが欧州における軽自動車規格のEVの可能性に言及し、日産サクラが需要に最も適した車だとしていた。

 欧州で軽EVの人気が高まれば、価格面で競争力がある日本車にも販路拡大のチャンスがあるかもしれない。しかし、日本の軽自動車規格で作られた箱型ボディは欧州の消費者の好みではないこと、現地の厳しい安全規制をクリアしなければならないなど、課題も多いとオートカーは指摘。実際のところ、一部の車種では現地の安全基準に合わせるための改造は難しく、経済的メリットは薄れるという見方だった。

◆欧州産の軽も? 市場拡大の予感
 前出のレポートによれば、今後欧州は主要なマイクロカー市場になると予測されている。世界有数の自動車生産地域である欧州では、研究開発への民間投資も巨額だ。また、温室効果ガス排出量削減への取り組みにより、電動マイクロカーメーカーには成長機会が生まれており、都市化の進展と電気自動車技術の進歩が、欧州マイクロカー市場をさらに活性化させると見られている。

Text by 山川 真智子