大麻、やせ薬? 米国の「酒離れ」、大手メーカーが挙げる意外な要因
ZHMURCHAK / Shutterstock.com
アメリカの酒造大手ブラウンフォーマンが、現在の環境下で需要が鈍化し、今年の既存事業の売上高が減少するという見通しを示した。トランプ関税や景気の先行きの不透明感が主な要因とされる。これに加え、アルコール業界特有の売上低迷の理由「ビッグ3」があると同社CEOは指摘。近年の社会の変化に危機感を募らせている。
◆ジャックダニエルも……蒸留酒売上低迷
ウイスキー「ジャックダニエル」を展開するブラウンフォーマンのローソン・ホワイティング最高経営責任者(CEO)はアナリストとの電話会談で、同社にとっての大きな問題は渦巻く関税と景気後退への不安によって個人消費が冷え込んでいることだと述べた(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)。
プレミアム・ウイスキーは韓国、ブラジル、トルコなどで国際的に成長しているものの、ウイスキーの出荷量(同社の販売代理店が消費者に販売した量)は直近の四半期に全体で3%減少し、ジャックダニエルに限れば4%減となった。経済アナリストからは、アメリカ国内でのジャックダニエル・ブランドの売上減少について懸念の声も上がっている。(株式・経済関連ニュースサイト『マーケット・ウォッチ』)
◆Z世代はお金がない 酒離れ深刻
ホワイティング氏は、酒類需要減少に「ビッグ3」と呼ばれる要因があると指摘する。その一つが、Z世代のアルコール消費の減少だ。
Z世代がアルコールを飲まない理由に、健康志向であることや、飲酒よりもプレミアムな体験を求めていることなどがあると言われているが、業界紙ドリンク・ビジネスは、最大の理由は彼らにお金がないことだと述べている。上の世代に比べ、低収入で雇用も不安定、さらに親元を離れたばかり。収入に占める飲酒代の割合はミレニアル世代と変わらないが、収入自体が少ないため支出額が少ないとしている。
さらに、最近の若者はスマホやネットに費やす時間が増え、他者と顔を合わせて交流する時間が減っている。つまり飲み会の回数が減っているといえる。加えて泥酔すればすぐに撮影され、その様子が拡散されてしまうというリスクもあり、アルコールの魅力が薄れているという。(同)
◆意外な敵も登場 今後も重大な脅威に
2番目の要因は、アルコールの代替品としてマリファナの使用が増加していることだという。ブラウンフォーマンは、先日発表した決算資料の中で、将来の業績に影響を及ぼす「リスクと不確実性」として、「消費者の嗜好や消費傾向、購買パターンの変化」のほかに「大麻のさらなる合法化」を挙げている。
大麻関連ニュースサイト『マリファナ・モーメント』によれば、ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストが昨年、アルコール飲料の代用として大麻を使用する人が増えていることを示唆する調査データを紹介。大麻合法化運動の拡大が、酒類業界にとって重大な脅威となり続けるという見解を示していた。
3番目の要因は、「GLP1受容体作動薬」と呼ばれる人気のやせ薬だ。詳しい仕組みは不明だが、この薬は胃の排出を遅らせるため、アルコールの吸収速度も遅くなる可能性がある。また、これらの薬は脳の報酬系に作用してアルコールから得られる快感や飲酒欲求を減少させることがわかっている。したがって、GLP1薬の使用者が増えれば、アルコールの消費量が減る可能性が高い。(米ABCニュース)
ホワイティング氏は、「ビッグ3」は売上減少の主要因ではないとしながらも、事業への何らかのプレッシャーになっていると言わざるを得ないとしている。