米でトヨタの新車が破格の70%オフ…しかし、反応は冷ややか?

Toyota Motor Sales, U.S.A., Inc.

 米トヨタが水素燃料電池車「ミライ」の2024年モデルに対し、過去に例を見ない大規模な値引きを実施することが明らかになった。値引率は最大70%に上る。

◆最大70%引き、さらに燃料を無料で
 米自動車ニュースサイト『ジャロプニック』(1月22日)によると、米トヨタは最大4万3000ドル(約670万円)の値引きに加え、72ヶ月間の0%金利ローンと1万5000ドル(約230万円)分の水素燃料の無料オファーを実施している。
 
 具体的な販売価格についてジャロプニックは、「標準グレードのXLEは5万190ドル(約780万円)から1万5190ドル(約240万円)へ、上級グレードのリミテッドは6万7115ドル(約1050万円)から2万4115ドル(約380万円)まで下がる」と伝えている。XLEの場合、これは当初価格から70%の値引きに相当する。リミテッドでは64%の値引き率となる。
 
 大幅な値引きについて、ジャロプニックは「新車で70%もの値引きが実施されるのは、恐らく自動車業界で初めてのことだ」と指摘している。

◆飛びつくのは「愚か」か?
 だが、最大70%の値引きにもかかわらず、飛びつく購入者はさほど多くない可能性が指摘されている。ジャロプニックは値引きを報じながらも、「もしあなたが愚かにもそれを買うならば」と冷ややかだ。

 米自動車ニュースサイト『ドライブ』(1月22日)によると、2024年のミライの販売台数はアメリカで、前年比81.9%減の499台にとどまった。同誌は、販売不振の背景に、水素インフラの不足があると指摘する。水素ステーションは地域的に、極端に偏在している。記事によると、「アメリカ国内の水素充填ステーションは54ヶ所のみで、そのうち53ヶ所がカリフォルニア州に集中しており、残る1ヶ所はハワイ州にある」という。

 米カーバズ誌は、そもそも水素ステーションの整備が進むカリフォルニア州でしか主に販売されておらず、購入検討層が著しく限られていると指摘する。また、従来のガソリン車や電気自動車と比べて水素燃料のコストが高額なこと、航続距離がカタログ値の402マイル(約647キロメートル)より大幅に少ない230~270マイル(約370~430キロメートル)程度にとどまる点もネックになっているという。加えて、近年カリフォルニア州内の水素ステーションは、次々と閉鎖されている。

◆賛否の声「クラウンより安い」「時間を無駄にする」
 各誌の読者たちは、70%オフの異例の値引きについて議論を交わしている。ぜひ飛びつくべきだという肯定派からは、このような意見が聞かれた。

 「環境さえ整っていれば欲しい!」

 「ミライは静粛性が高く、高級感もあり乗っていて楽しい」

 「水素スタンドの近くに住んでいれば買いだろう」

 「無料燃料を考えれば、仮に3年間で車両価値がゼロになったとしても、クラウンのリースより安く乗れることになる」

 一方、慎重な意見もあるようだ。

 「2023年式のミライに乗っているが、安くともおすすめできない。素晴らしいクルマだが、航続距離内での燃料の確保は厄介で、まるで『パズルを解く』感覚だ。3時間かけて3つのガソリンスタンドを巡っても満タンにならない」

 「家庭の120Vや240V電源で充電できないことを考えれば、EVよりもさらに不便だ」

 無料燃料付きで240万円とはバーゲン価格だが、それでも慎重になるべきとの意見はあるようだ。

Text by 青葉やまと