米スタバ、商品買わない人のカフェ・トイレ使用を禁止へ 方針変更の理由は?
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米スターバックスは、北米の全店舗で新たな方針を導入すると発表した。これにより、何も買わない人が店内に滞在したり、トイレを使用したりすることはできなくなる。2018年以来、オープンドア・ポリシーを採用し、誰でも入店できるようにしてきたが、方針転換せざるを得ない理由があったという。
◆買わない客への不適切対応? 警察沙汰に発展……
スターバックスは、これまで商品の購入に関係なく、カフェやトイレへの出入りを許可してきた。この方針は、2018年にフィラデルフィアの店舗で、2人の黒人男性が逮捕された事件をきっかけに導入されたものだ。
2人の男性は入店後に何も買っていなかったため、従業員が男性たちのトイレの使用を拒否。それでも男性たちが店から立ち去ろうとしなかったため、不法侵入だとして警察に通報した。
ところが、警官が駆けつけて男性たちを逮捕する様子を撮影した動画がネットで拡散。男性たちに手錠がかけられるのを見て、ほかの客が「何もしていないのになぜ」と尋ねる様子が映っていた。
この事件は広く批判を浴び、その後スターバックスは人種的偏見について従業員を教育するため、アメリカ国内の全店舗を一時閉鎖した。逮捕された男性たちは同社を訴えたが、非公開の金額で和解に至っている。
◆オープン過ぎた? 問題続出
しかし、オープン・ポリシー採用以来、スターバックスの従業員や顧客は、手に負えない行動や危険な行為に悩まされてきたという。薬物使用や、スタッフを脅かす迷惑行為を含む度重なる安全上の問題のため、スターバックスは2022年に16店舗を閉鎖した。(AP)
同社の北米部門トップのサラ・トリリング氏は、顧客が清潔で安全な環境を必要としているというのが、経営幹部の認識だと説明。従業員も、誰でも利用できるというアプローチについて懸念を共有しているとし、店舗の使われ方をリセットする必要があると述べた。(ウォール・ストリート・ジャーナル紙:WSJ)
新方針により、北米の1万1000店以上の直営カフェでは、カフェ、パティオ、トイレは顧客とその同伴者および従業員のためのものであることを示す表示が掲げられることになる。施行は1月27日からで、従わない客には退店を要請することが従業員に指導されているという。ちなみに、無料の水も顧客とその同伴者に制限される。(WSJ)
WSJが閲覧したスターバックスの従業員への通達によれば、新方針には、店舗内でのハラスメント、暴力、脅迫的な言葉、酒類の持ち込み、喫煙、他人に金銭を求める行為を禁止する旨の表示の追加も含まれている。
◆売り上げ低迷 環境改善は必須
ニュースサイト『アクシオス』は、スターバックスの方針転換は売り上げの低迷によるものだと見ており、ブライアン・ニコル最高経営責任者(CEO)は、経営再建のプレッシャーにさらされていると報じている。
WSJによれば、持ち帰りビジネスの増加により、長居する場としての魅力が損なわれたうえに、カフェでたむろする人やトイレの長蛇の列が嫌だ、という客からの不満もあるという。こういった意見を意識してか、ニコルCEOは長居したくなる魅力的な店舗作りを目指すとしている。
APによれば、ニコルCEOは、売り上げを回復させるために、スターバックスがかつて持っていたコミュニティ・コーヒーハウスの感覚を取り戻したいとも述べている。先駆的な開かれたカフェのイメージを捨ててでも、店舗の環境改善が必要と判断したようだ。