「トヨタに謝らないといけない」世界で見直されるトヨタの全方位戦略 HV販売好調で

Toyota Motor Sales, U.S.A., Inc.

◆BEVは高い価格とインフラ整備が懸念材料に
 フィナンシャル・タイムズ紙は、欧州およびアメリカの市場でBEVの需要が冷え込んでいると指摘し、理由として「手に負えないほど高い価格」と「不十分な充電インフラ」を挙げる。

 一方、ドライバーにとってハイブリッド車は、従来のガソリン車よりも燃費が良く、かつ従来車よりも環境に優しい利点がある。BEVほどのリセールバリュー(手放す際の再販価値)はないが、航続距離に不安を覚えたり充電に時間を要したりすることもない。アメリカではEVよりもハイブリッド車のほうがガソリン車に価格が近く、これもハイブリッド車の販売を後押ししている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(2月6日)も、BEVについては「充電の問題や価格の上昇」が消費者の懸念事項となっており、より安価でガソリンでも走行できるハイブリッド車に消費者が魅力を感じていると報じている。

◆かつて批判されたトヨタに「謝る必要がある」
 従来の内燃機関に引き続き依存するトヨタの計画には、同社投資家や環境保護論者からの反発も大きかった。米環境保護団体「シエラクラブ」でキャンペーンのディレクターを務めるキャサリン・ガルシア氏は、「プリウスのハイブリッドは、どのガス自動車にも搭載されているような、公害を引き起こす内燃エンジンで動いている」などと批判していた。

 だが、環境に優れたBEVが登場しても、広く購入されないのであれば意味がない。高価なBEVに消費者は購入をためらうだろうとの立場をトヨタは繰り返し示してきた。近年ではその正当性が証明されつつある。フィナンシャル・タイムズ紙は「かつて異端とされたトヨタの主張が見直されつつある」と評価する。モルガン・スタンレーのアナリストであるアダム・ジョナス氏は2月、「私はトヨタに謝る必要がある」と認めた。ハイブリッド市場は急速に消滅するだろうとの予測をジョナス氏は大々的に示していた。

 アメリカの保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のエネルギー・気候・環境センターのディレクターは、「100%EVではなく、人々が買いたいと思うクルマを作り続けると言ったことで攻撃されたトヨタを祝福したい」と述べた(フォックス・ビジネス)。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ハイブリッド車の利益率をガソリン車並みに押し上げるのに約20年かかったことから、当面トヨタは他社の追随を許さないだろうとの見方を取り上げている。

 現実的に普及可能な電気自動車のありかたを10年前から正確に見抜いていたことが明らかになり、世界のトヨタを見る目は変わってきている。

Text by 青葉やまと