理由なく解雇される可能性のあるアメリカ、なぜ? 相次ぐIT企業の大量解雇
◆上司の機嫌で解雇しても合法
終身雇用が前提の日本の雇用制度とは異なり、アメリカでは「自由意思に基づく雇用」と呼ばれる雇用形態が一般的だ。米雇用法に詳しい弁護士のナジャ・ファーリー氏はブルームバーグに対し、この制度は「いかなる事由においても、あるいはまったく事由がなくとも、解雇される恐れがあるということです」と説明している。経営学に詳しい別の弁護士は同記事の中で、「上司の機嫌が悪かったから。あるいはあなたが上司のジョークに笑わなかったから」といった事由であっても、必ずしも違法ではないと述べている。
ホグラー名誉教授はカンバセーション誌への寄稿を通じ、「自由意思に基づく雇用」のルーツは19世紀にまで遡ると解説している。ある従業員が不当解雇だとして鉄道会社を訴えたが、裁判所は、会社側は理由を問わず「雇用を終了する権利」があると判断した。これを原点として、現在でも事由のない解雇が合法とされている。
◆解雇が認められない場合も
さすがにルール無用というわけではなく、解雇が違法とされる事由も存在する。ブルームバーグによると、米雇用機会均等委員会は、人種や宗教、性別や遺伝情報などに起因する解雇を、差別行為にあたるとして禁止している。
記事によると、このほかセクハラ行為に抗議した者、あるいは内部告発者に対し、報復として解雇することはいずれも禁止されている。さらに、組合に加入している従業員を解雇する際は、明確な解雇事由が求められる。
また大量解雇にあたる場合には、米連邦労働者調整・再訓練予告法(WARN法)に基づき60日間の事前通知期間と同期間の給与の支払いが求められる。ただし、ツイッター社の場合、この権利を放棄する書面に従業員が事前に署名させられていたとの情報がある。ホグラー名誉教授はカンバセーション誌に対し、請求が通る可能性は低いとの見方を示している。
CNBCは、アメリカでは従業員保護の仕組みがほとんどないと指摘し、「アメリカはこのような(手薄な)システムを持つ世界でも数少ない国の一つである」と論じている。
雇用主にとっては「自由の国」だが、従業員側にしわ寄せが生じているようだ。
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