シャネルがセネガルのショーで独自アプローチ 試みは成功するか
◆ダカールにおけるシャネルの試みとは
欧米ブランドが「アフリカ」を舞台にしたり、創作のインスピレーションにしたりする事例は、シャネルが初めてではない。こうした事例は、文化盗用や植民地主義の延長といった点から批判されることも少なくない。たとえば、2019年にディオールがモロッコのマラケシュで、クルーズ・コレクションを発表した際は、ローカルの文化や素材を意識したコレクションが意図されたものではあったが、アフリカ各地からは批判の声が上がった。
ニューヨーク・タイムズのベテランファッション・ジャーナリスト、ヴァネッサ・フリードマン(Vanessa Friedman)は、最も高級な欧州ラグジュアリーブランドの一つであるシャネルが、店舗もなく、事業的な意味合いも非常に限られているアフリカ大陸という地において、単発のショーのためだけに降り立つというのは、大々的に植民地主義を匂わすものになりかねなかったと指摘。しかし、今回のショーは大きく批判を浴びることはなく、フリードマンはシャネル独自のアプローチを評価した。たとえば、今回のショーは、ダカール・ファッション・ウィークのタイミングと連携をとった形で、3日間のフェスティバルというフォーマットで開催。アート、ダンス、音楽といったさまざまなクリエイターたちにスポットライトが当てられた。
また、特筆すべき点は、850名の招待客のうち約500名がアフリカ各地から集ったという点だ。アフリカ各地で活躍する写真家やデザイナーたちが招待され、プレゼンスを発揮していた。また、ファッションショーのスタッフについては、62人のモデルのうち19人がアフリカ人、うち12人がセネガル人。ヘアメイクは、半数が地元のスタッフで構成されたとのことだ。一方で、コレクションで披露された服は、セネガルやアフリカとは直接的に関係しておらず、1970年代の音楽シーンにインスパイアされたもので、製作もすべてフランスの工房で行われた。
シャネルは、フランスの職人工房を買収し、職人との創作活動に取り込んでいる。2021年12月には、職人のための工房や一般向けのギャラリーなどが一体化したメティエダールのための複合施設「Le 19M」をオープン。来年1月12日から3月末までは、Le 19Mのオフサイトギャラリーをダカールにオープンする。ギャラリーでは、セネガルの刺繍や織物などを取り上げるとともに、総合的なアートとクラフトに関する展示やイベントが開催予定。今後、セネガルやほかのアフリカの国の職人がシャネルと協業するという可能性もゼロではないのかもしれない。
欧米のラグジュアリーブランドの「アフリカ進出」。地元の文化や人々を尊重しつつ、進出を成功させるためには、アフリカ大陸の職人やクリエイターとの連携が鍵を握ることになりそうだ。
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