「電車セラピー」の導入進むフランスの老人ホーム その効果とは?

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 フランスでは近年、「トレイン・セラピー」の設備を取り入れる老人ホームが増えている。トレイン・セラピーとはどういうもので、どういう効果があるのだろうか?

◆ヴァーチャルな電車旅
 認知症の人を対象とするトレイン・セラピーは、数年前にイタリアで生まれたアイデアだ。電車のワゴンそっくりな設備を室内に取り入れ、窓にあたる部分には次々に流れる車外風景を映し出す。もちろん、バックには電車の音が聞こえ臨場感を高める。施設によっては切符も準備し、車掌に扮した職員の検札を受け、しばしバーチャルな電車の旅を体験するというものだ。

◆徘徊の原因である不安をなだめる効果
 ある老人ホームによれば、トレイン・セラピーは95%の体験者に落ち着きを取り戻させた(20minutes紙)。フランスのアミアンで平均年齢81.6歳の男女42人を対象に2019年5月から6ヶ月行われた調査では、セラピー前に落ち着きを示していた人が58.3%だったのに対し、セラピー後は87.5%に増加したという(グラン・ビア)。


グラン・ビアのトレインセラピー施設

 多くの場合、認知症患者は不安感から落ち着かず、ときには徘徊を繰り返しがちだ。またその不安感は夕刻に高まることが多い。フランス南部トゥールーズ近くの老人ホームでは、73%のトレイン・セラピーが午後4時から午後6時の間に行われるという(20minutes紙)。今年5月にトレイン・セラピーを取り入れたフランス北部の老人ホームにおいても、夕方の不安を軽減するセラピーは午後5時からに設定している(リル・アクチュ紙)。

Text by 冠ゆき