ライブコマース先進国・中国に学ぶ!「コンテクストマーケティング」

Photo by ACD

著:古居 弘道(株式会社ACD)

 昨今、日本でも注目されているライブコマース。日本のユーザー数トップシェアのLINE社がテストマーケティングに乗り出すなど、トレンドのマーケティング手法だ。そんなライブコマースについて、最先端を走っている中国の事例をいくつか紹介する。

◆ライブコマース伸長の理由は「理想の自分に近づきたい」欲求
 中国でのライブコマースユーザーは、20年6月時点でネット通販ユーザーの約41%にあたる3.1億人に上るといわれている。金額ベースで見ると、ネット通販におけるライブコマースの比率は2021年時点で約15%。2025年には約24%まで伸長し、市場規模は100兆円を超える想定だ。

 ライブコマース成長の鍵は「自己実現価値を満たしたい」という欲求である。つまり、求められているのは、ただ「役に立つもの」ではなく「理想の自分に近づける」アイテムだ。ライブコマースは、信頼できるライバーの口を通じて「本当に自分に合っているのか」を確認できる点で、令和の消費者ニーズにマッチしている。

◆日本にもやってくる!? 中国ならではのライブコマース
 とくに、中国版LINEとも呼ばれるWeChatで、ライブコマースは伸長している。本来、友人とつながるためのクローズドなアプリであるWeChatは、オープンなSNSと比べ、より深いコミュニケーションを取るポテンシャルがある。WeChatは、ライブチャンネルのファンによるコミュニティを作成できるほか、そのコミュニティ内でライブよりも親密な連絡をライバーと取り合える点が特徴だ。よりLTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)の高い顧客作りに向いていると言われている。

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◆「売らない」ライブが成功するWeChat市場
 WeChatライブのユーザーは、お気に入りのコミュニティやライバーに対する愛着がある。TVを見るようなモチベーションでチャンネルを見ているので、ライブ中「いいね!」と思ったものは彼らにとって唯一無二だ。そのため、値下げやクーポンといったオファーや、同カテゴリ内での差別化を謳う「売る」ライブではなく、「売らない」WeChatライブに、結果的に売上がついてくる。

◆令和のマーケティングに必要なのは「コンテクストマーケティング」
 ユーザーが心から共感できるライバーが、ユーザーの質問に答え、商品について伝える。企業からの押し売りではなく、その商品が生まれた理由や、作り手の想いを代弁する。それはつまり、文脈を伝える商売=コンテクストマーケティングだといえよう。目の前にある商材の「良さ」をただ伝えるのではなく、どんな物語を持って生まれた商品なのか=文脈を伝えているのだ。

 どんな商品もある程度のクオリティで制作できる令和の時代。求められているコンテクストマーケティングを、最も伝えやすい場がライブだからこそ、ライブコマースはトレンド化しているのかもしれない。

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著者:
古居 弘道(ふるい ひろみち)
株式会社光通信(東証1部9435)にて2000年まで日本市場でのモバイルの普及に携わる。その後独立し、韓国大手銀行の多通貨クレジットカード決済(マルチカレンシープライシングサービス)の立ち上げに参画。2016年ANAホールディングスとの合弁会社で、中国市場開拓支援サービスを提供する株式会社ACDの立ち上げに執行役員として参画。2020年同社の代表取締役CEOに就任。

Text by 古居 弘道