IPO果たした米バズフィード、調査報道から撤退 デジタルメディアの行方は

バズフィードCEOのジョナ・ペレッティ(2019年3月)|nrkbeta / flickr

 昨年末に新規株式公開(IPO)を果たした米国発のデジタルメディア会社であるバズフィード。しかし上場後の株価は下落。デジタルメディア会社としてのIPOとしての期待が寄せられた一方、経営状況は赤字でリストラクチャリングが行われている。バズフィードの軌跡とは。

◆バズフィードの軌跡
 「世界史上、最も多様で社会的に関与したオンライン世代のための、デジタル・メディアのリーディング・カンパニー」。バズフィード社は自社をこのように表現する。バズフィードは、2006年に現職のCEOのジョナ・ペレッティ(Jonah Peretti)が、ジョン・ジョンソン(John Johnson)とともに立ち上げたウェブメディア。ペレッティは、2005年に米国で創設された世界最大級のネットニュースメディアであるハフポスト(旧ハフィントン・ポスト)の共同創業者でもある。彼は2011年まではハフポストに所属しつつ、バイラル・コンテンツを展開する「実験」の場としてバズフィードを成長させてきた。

 バズフィードは成長とともに事業を多角化させてきた。2012年にはオンライン報道とビデオ・コンテンツを展開するグローバル報道機関としてバズフィード・ニュースを開始。バズフィード・ニュースは、2021年に報道の世界で権威のあるピューリッツァー賞を受賞するなどし、ニュース・メディアとしての地位を確立してきた。また2014年には初のブランド・コンテンツとして、キャットフードブランドのフリスキーのコマーシャルを手がけた。ユーチューブ上で公開されている約3分間のビデオは、現在までに3250万回以上再生されている。

 2015年にはバズフィードの手法を料理の世界に応用した新たなコンテンツ・ブランド、テイスティ(Tasty)をロンチ。テイスティーのフェイスブックのフォロワー数は2015年の200万人から、2022年1億8000万人にまで拡大した。2018年には米国最大のスーパー小売チェーンであるウォルマートと提携し、テイスティ・ブランドのキッチン用品の販売も開始。テイスティは、調理本やアプリなどといったプロダクト展開も行い、メディアを超えたビジネス展開に成功しているブランドだ。

Text by MAKI NAKATA