マスク氏の脳チップ企業、「サル虐待」で告発「23匹のうち15匹死亡」
◆臨床試験のステージへ
動物実験ではおよそ3分の2のサルが死亡した計算になるが、マスク氏はこの技術をヒトでの臨床試験の段階へと進めたい意向だ。英ガーディアン紙(1月20日)によると、同社はすでに臨床試験の責任者を募集している。マスク氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙が主催したCEO協議会のイベントにおいて、「ニューラルリンクはサルでは非常にうまく機能しています」と述べ、リスクの少ない装置だとの認識を強調している。「我々は非常に多くのテストを実施し、ニューラルリンクが非常に安全かつ高い信頼性を誇り、装置の取り外しも安全に行えることを確認しています」との説明だ。
しかし、世間の反応は必ずしも好意的ではない。USAトゥデイ紙(1月23日)によると、ヒトでの臨床試験のニュースを受けてツイッター上では、ダークSFドラマの『ブラック・ミラー』がトレンド入りした。同作のシーズン1最終話『人生の軌跡のすべて』では、脳にチップを埋め込んだ人間たち同士で全記憶の再体験と共有が可能となるが、その先にはプライバシーにまつ わる悲劇が待ち受けていた。同紙によるとドラマの世界を引き合いに出さずとも、「この技術に潜むダークな特性」に懸念を示す人々は少なくない。
◆麻痺を克服できる日は
ガーディアン紙によるとマスク氏は、ニューラルリンクによって「麻痺のある人が心に思い浮かべるだけで、親指で入力する人よりも速くスマートフォンを使えるようになる」という未来を描いている。現在はサルが画面上でビデオゲームを操作するに留まるが、将来的には「ニューラルリンクを使って、脊髄を損傷した人が全身の機能を回復できる可能性もあると考えている」という。
マスク氏は2019年の段階でヒトの臨床試験をまもなく開始すると宣言していたが、計画には遅れが出ているようだ。USAトゥデイ紙は「しかしながらニューラルリンクによるマスクのビジョンの実現は、いまだ遠い未来の話かもしれない」と述べている。倫理問題や人体への安全性の懸念など課題は尽きないが、いつか麻痺に悩む人々の希望となる日は来るのだろうか。
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