スポティファイ危機 ジョー・ローガン問題でアーティスト離反、解約者増加の可能性も

Gregory Payan / AP Photo

 近年は世界中どこでも、音楽を聴くためにストリーミングサービスを利用するのが一般的になったが、最近はラジオDJのようなポッドキャスト番組を同じサービスで聴く人々も多い。アメリカにもアマチュアからセレブまで多数のポッドキャスト番組があり、そのなかでも右派寄りのリスナーに大人気なのがUFCコメンテーターでコメディアンのジョー・ローガンのポッドキャスト『ジョー・ローガン・エクスペリエンス』で、ローガンは2020年にストリーミングサービス大手のスポティファイ(Spotify)と1億ドル以上と言われる破格の独占放送契約を結んだ。

◆ミュージシャンが続々とボイコット宣言
「歯に衣着せぬ」という言葉がぴったりなローガンは、これまで彼のポッドキャスト上でさまざまな問題発言をしてきた人物だが、良くも悪くもオープンなところが人気の秘密とされる。しかし、彼は多くの人々が聴くそのポッドキャストで、多くの右派ゲストを呼んで新型コロナウイルスとそのワクチンに関する誤情報を流していたことから、医師グループの批判を受ける結果となった。

 ハフポストによると、270人に上る医師やヘルスケア従事者が、ローガンがポッドキャストで流す新型コロナに関する誤情報を批判し、スポティファイに対し、これらの誤情報を慎むポリシーを策定するよう要求する手紙に署名した。しかしスポティファイ側はその要求に対して何も措置を取らなかったため、この騒動はさらに拡大する結果となった。

 NBCニュースによると、同社がローガンの誤情報に何も措置を取らないことから、有名シンガーのニール・ヤングは「スポティファイはローガンか(ニール)ヤングのどちらかを選べる。両方ではない」と述べ、マネージャーとレコード会社にヤングの曲をすべてスポティファイから削除するよう依頼した。それに続いてシンガーのジョニ・ミッチェルもスポティファイから曲を削除する選択をした。またCNNによると、その後はローガンが黒人蔑視の「Nワード」を多用することに憤慨したシンガーのインディア・アリーや、トランプ前大統領の姪で心理学者のメアリー・トランプ氏も、ツイッターでスポティファイからポッドキャストを移動すると発言した。ちなみに、同氏はその後ポッドキャストをアップル・ポッドキャストに移している。

Text by 川島 実佳