新興国デジタルメディアの現状、抱える課題 米NPOが12ヶ国200団体を調査

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◆新興国デジタル・ネイティブ・メディアの共通項
 今回の調査は3地域、12ヶ国と地理的に多様なメディアが対象となってはいるが、それぞれの地域に根ざした報道を行いつつ、持続可能な事業モデルの構築を行う団体として、多くの共通点が明らかになった。コンテンツの内容に関しては、人権、政治、ジェンダー・女性、ヘルスおよび環境が、すべての地域のメディアが扱っている分野のトップ5に上がった。これらの分野に関する報道は、議論や論争を引き起こすことも少なくない。実際、調査に参加した多くのメディアは脅威にさらされている。調査に参加したメディアの半数がなんらかのデジタル攻撃の被害にあっており、4割が脅しの被害を経験している。また、とくにSNSを通じたオンライン・ハラスメントは、多数のメディアが日常的に経験している。同時に、彼らの報道は地域社会にインパクトももたらしている。インパクトの内訳は、市民参画の増加が76%、リアルもしくはオンラインでのプロテストやデモ参画を促したというものが42%、法や法制度の変更が38%という結果。政治家の辞職や解雇をもたらしたという回答も22%となっている。

 報告書では、メディアの収支に関する調査結果も含まれる。収支に関してのデータを提供したメディアは、201のうち141にとどまった。とくにアフリカのメディアからのデータは限られており、データを提供したメディアは49のうち19のみ。そもそもデータを収集・管理していないという根本的な課題もあるようだ。各メディアは年間収入額に応じて4段階の階層に分類されており、階層1は年間収入が2万ドル未満の団体、階層4は年間収入が50万ドル以上の団体となっている。3地域総合の結果では、収入が2万ドル以上10万ドル未満の階層2が29%と最も多く平均収入は約5万ドル。続いて階層1が26%で平均収入は約9000ドル。階層4は15%で平均収入は約100万ドル、9%は収入ゼロとの報告だ。

 メディアの主な収入源に関しても3つの地域に共通点がある。収入源のトップは助成金。そして広告収入、コンサルサービス、コンテンツ提供サービスと続く。2020年時点では読者からの収入は6%にとどまった。特筆すべきは、2020年のパンデミック期間中、助成金の割合が増えたという点。一方で、助成金収入への偏りは、事業モデルの継続性の観点においては懸念すべき点である。報告書では、収入とチーム編成の相関関係も明らかにしている。営業担当のスタッフを雇用している団体は、そうでない団体に比べて6〜9倍の収入があった。また、テクノロジーとイノベーションに特化したサポートスタッフを雇用している団体は、そうでない団体に比べて(営業スタッフの有無にかかわらず)3倍の収入があった。フルタイム換算した平均スタッフ数は12.5〜14人で、そのうちの約半数がコンテンツ制作に携わるスタッフで構成されている。

 報告書のもう一つの特筆すべき発見は、女性創業者の割合だ。2016年の調査では、ラテンアメリカ4ヶ国の調査対象における女性創業者の割合は38%だった。今回の3地域の調査においても、その割合は32%という結果。新聞やテレビといった既存メディアにおける女性のオーナーシップが限られているという文脈においては、3割強という数字は比較的高いといえる。また、各国におけるマイノリティの参画に関しても、調査対象の25%の団体において創業者の少なくとも一人はマイノリティを代表しているとの回答であった。地域別では、ラテンアメリカが30%、東南アジアが25%、アフリカが20%という結果だ。

 今後ますますの活性化が見込まれる新興国のデジタル・メディア。クオリティを担保しつつ、インパクトを拡大するためには、より大きな収入が必要だ。今後、他メディアとの連携による運営効率化や、企業とのパートナーシップ構築による新たな収入源の確保といったような選択肢がより重要になりそうだ。

 報告書全文はこちら(報告書巻末に、調査対象となったメディアのリストあり)。

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Text by MAKI NAKATA