接種完了者にプレゼント、割引提供 企業がワクチン普及を後押し

Eigenblau / Shutterstock.com

 日本では、ようやく軌道に乗ったばかりの新型コロナウイルスワクチン接種。世界には、すでにかなり前を行く国も少なくない。それらの国の次のタスクは、接種率のさらなる向上だ。なかには企業レベルで接種の後押しを行う例も出ている。

◆接種率70%の高い壁
 世界保健機関(WHO)は5月28日、新型コロナパンデミックの収束は、全世界の人口の少なくとも70%がワクチン接種を終えるまでは望めないという見解を示した。だが、6月5日時点で、全人口のうち、少なくとも一回目のワクチンを受けた人の割合は、11.48%に過ぎない。ロイターによれば、世界で最もワクチン接種(一回目)が進んでいる国は、上からカナダ、バーレーン、イスラエル、イギリス、チリ、カタール、ハンガリー、アメリカだ。これらの国では、いずれも人口の半分以上が少なくとも一回目のワクチンを終えている。とはいえ、ワクチン接種が完了した人の割合が最も高いイスラエルでさえ60%に満たず、WHOの示す70%にはまだ届いていない。また、一日のワクチン接種数も激減しており、ピーク時には一日20万回以上こなしたイスラエルでも、現在は一日3000件未満の接種を数えるのみとなっている。

◆ワクチン接種でコンサートチケットが格安に
 接種数の伸び悩みは、アメリカも同様だ。同国では、少なくとも一回ワクチンを接種した人は50.91%、すでに必要回数終えた人も全体の41.3%を占める。だが、一日のワクチン接種数は、4月半ばのピークを超えたのちはいくぶん減少気味となっている。それもちょうど4月19日からすべての成人にワクチン接種が開かれたにもかかわらずである。ちなみに、現在は12歳以上の未成年のワクチン接種も可能となっている。バイデン米大統領が定めた具体的な目標は、7月4日の独立記念日までに少なくとも一回ワクチンを接種した成人の割合を70%にするというものだが、いまのペースでは実現は難しい。

 そんななか、フロリダのイベントプロモーション会社リードフット・プロモーションズは、新型コロナワクチン接種済みの観客への割引価格を発表した。対象となるのは6月26日に開かれるパンクバンド、ティーンエイジボトルロケットのコンサートで、ワクチン接種済みであればチケットは18ドル(約2000円)だが、ワクチン未接種の場合は999.99ドル(約11万円)かかるというものだ。ワクチン接種済みというのは、6月12日までにファイザーかモデルナのワクチンなら二本目の接種、ジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンなら一度の接種を終えていることを意味し、入場の際にワクチンカードを提示しなくてはならない。もちろんコンサートでは「スタッフもボランティアもバンドのメンバーもみなワクチン接種済み」だ。「何をしなければならないのかを告げているのではない。これはビジネス上の決定で、判断するのは市場だ」というのがその考えだ。同社のポール・ウィリアムズ氏によれば、この決定に対する地元の音楽関係者からの反応は「圧倒的に肯定的」であった。しかし、同時にアンチ・ワクチン派からの苦情メッセージも殺到している。(RTL 5minutes、5/30)

Text by 冠ゆき