アフリカで中国の音楽配信「ブームプレイ」躍進 大手も狙う市場の現在地

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◆躍進する中国のブームプレイ
 ブームプレイは、アフリカで最も成功している音楽ストリーミング・サービスの一つで、月間アクティブユーザー数は5000万人、アンドロイド版アプリのダウンロード数は、昨年末時点で1億を記録した。ブームプレイのビジネスモデルは、フリーミアム型で、プレミアムプランの月額は約140円。デスクトップ上では、サインアップなしでストリーミングが可能だ。

 ブームプレイは、ワーナー・ミュージック・グループ、ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)、ソニー・ミュージック・エンターテインメントの三大レーベルすべてとのライセンス契約を結び、約5000万以上の楽曲を提供している。UMGとは、2018年から契約を結んでいるが、今年、展開市場がアフリカ7ヶ国から47ヶ国へと拡大されることが発表された。UMGは、欧米アーティストだけでなく、ナイジェリア、南アフリカ、カメルーン、コートジボワールといったアフリカ各国のさまざまなアーティストの楽曲も保有している(アフリカ・ビジネス・コミュニティーズ)。アプリ内では、ケニアやナイジェリア、セネガルやタンザニアなどの、国ごとのTop 100チャートに基づいたプレイリストも充実している。

 ブームプレイを展開するトランスネット(Transsnet)は、中国のインターネット企業、ネットイース・グループ(NetEase Group:網易)と携帯端末メーカーのトランシオン(Transsion Holdings:伝音科技)が2015年に創設した合弁会社で、アフリカ市場をターゲットとしたモバイル・サービス展開に特化している。同社は、ブームプレイのほかにも、短い動画を作成して共有できる、ティックトックに似たプラットフォーム、ヴィスキット(Vskit)や、ソーシャルメディアのモア(More)、モバイルペイメント・サービスのパーム・ペイ(PalmPay)といったブランド・ポートフォリオを持つ。

 トランシオンは、傘下にTechno、Infinix、Intelの3ブランドを抱える、アフリカ市場シェアナンバーワンの携帯端末メーカである。アフリカ・レポートによると、スマートフォン市場におけるシェアは48.2%で、次点のサムソン(16%)を大きくリードしている。トランシオンの携帯には、ブームプレイが初期段階でインストール済みだ。ハードウェアとソフトウェアの連携で、顧客の囲い込みに成功している。また、ブームプレイは、パンデミックでロックダウン・自宅待機が強いられた状況下の4月、2500ギガ分のデータを無料で提供するという2週間のキャンペーンを実施した。データは、ストリーミングに限らず、ほかのインターネット・サービスでも使用できたようだ。ブームプレイは、手頃な価格のスマートフォンとの連動、高いデータコストの緩和といったアフリカ市場ならではといえる戦略で、ユーザー数を増やしている。

 アフリカのデジタル音楽市場は、まだまだ初期段階にある。アフリカ大陸全体ではデジタル音楽の主力商品は、いまだに携帯の着信音楽という状況だ。貧困層も少なくない市場においては、高いサブスクリプションコストやデータコストは、ユーザーにとってはハードルとなる。一方、海賊版の普及というタダの代替品の存在は、音楽サービスプロバイダーにとっては、競合企業以上に深刻な障壁になる。しかし、長期的にブームプレイのような企業が拡大することは、アフリカの消費者にメリットをもたらすだけでなく、アフリカ各国のアーティストが国を超えて市場を拡大できる機会であり、アフリカ外の消費者にとっても、アフリカの音楽シーンを体感できるきっかけになる可能性もある。アフリカのデジタル音楽産業の今後のさらなる成長に期待がかかる。

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Text by MAKI NAKATA