世界的人気の「ジャパニーズウイスキー」、定義を明確化 海外ファンも歓迎
◆国内向けで緩かった? 世界的ブーム後に問題露呈
ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、ジャパニーズウイスキーにこれまで明確な定義がなかった理由を説明する。ウイスキーが日本にもたらされたのは1853年で、西洋を見習うことの一環として、明治時代に国産ウイスキーの生産が奨励された。生産者はさつまいもを原材料とするなど、欧米のウイスキーとは異なるものを作ったが、国内消費者向けであったことから、だれもウイスキーの定義など気にしなかったという。国内にウイスキー産業があると自慢できること、税収が発生することのほうが、最終製品の精度よりも重要だったとウイスキー・ライター、リアム・マクナルティ氏は話している。
1920年代になり、近代的な蒸留所が作られ、質の高いウイスキーも作られ始めた。しかし戦後もサラリーマンの仕事帰りの飲み物という大衆向けポジションは維持され、利益追求のため大手製造者によってルールの厳格化は阻まれてきたという。
ところが2000年代になり、プレミアム・ウイスキーのブームに火がつき、原酒の量が不足。そこで大手もスタートアップも海外の原酒を輸入し始め、これを混ぜたブレンデッド・ウイスキーが日本産として海外でも売られるようになった。ジャパニーズウイスキーへの高い評価は日本の職人技や原料を反映したもので、アメリカでは100%日本産ではないものを飲んでいたと知ったファンの怒りも当然ながら増えているとしている。
英テレグラフ紙は、ニッカの「フロム・ザ・バレル」は世界的に人気だが、外国産の原酒も使用するブレンデッド・ウイスキーだと指摘。ラベルにジャパニーズウイスキーの表示はないが、その製造地に関しては多くの混乱や憶測があったとしている。
◆基準明確化 透明性は信頼への第一歩
こうした問題を認識していた日本洋酒酒造組合は、「ジャパニーズウイスキー」の定義を明確にするため、表示に関する基準を発表した。①必ず麦芽を使用し、水は国内で採水されたものに限ること、②糖化、発酵、蒸留は国内の蒸留所で行うこと、③700リットル以下の木製樽に詰め、樽詰めの翌日から3年以上国内貯蔵すること、④日本において容器詰めし、アルコール分は40%以上であること、などが示されている。組合の自主基準であるため罰則はないが、ウイスキー大手を含む82社の製品が対象になることから、広く浸透することが期待される。運用開始は、2021年4月1日となる。
この動きに、海外からはポジティブなコメントが出ている。ブルーバーグは、「フロム・ザ・バレル」のような日本のウイスキーはブレンドの素晴らしさで評価されている面もあり、外国産原酒の利用自体は悪いことではないとする。しかし、自分のグラスの中身を正しく知ることはファンにとっては大切だとしている。
スコットランドのウイスキーバーのオーナー、マット・マクファーソン氏は、ジャパニーズウイスキーの大ファンを自称するが、やはり信頼を勝ち得るには透明性は重要だとする。本場スコットランドには日本産を偽物呼ばわりする人もいるが、今回のニュースが彼らの見方を変えるきっかけとなることを望むとしている(インバネス・クーリエ紙)。
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