日本の100円ショップから着想の中国雑貨「メイソウ」、米上場

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「メイソウ(名創優品、MINISO)グループホールディング」は10月15日、ニューヨーク証券取引所で上場初日を迎えた。株価は上昇で終えたが、終値はピーク値を大きく下回る結果となった。

 お手頃価格ながら洗練された家庭用品で人気の中国のディスカウントショップ「メイソウ」は、ニューヨークにおける新規株式公開で、6億800万ドル(約640億円)を調達した。

 米中関係か過去数十年で最悪な状態に陥っている緊張関係のなか、広州市に拠点を置く同小売業者が、中国企業として最も新しくアメリカ上場企業に加わった。

 貿易や技術をめぐる摩擦が続くなかでも、アメリカ市場が株式公開に魅力的な場であることに変わりはない。米中経済・安全保障問題検討委員会が集計したデータによると、今年、中国企業がアメリカにおける新規株式公開により調達した資金は、少なくとも75億ドル(約7900億円)にのぼる。

 メイソウの創業者で、同社の株の80%を所有する葉国富(Ye Guofu)氏は、15日のアメリカ上場にともない、純資産約40億円のビリオネアとなる見込みだ。

 同社プレスリリースによると、同社の米国預託株式には1株あたり20ドルの値がつけられ、当初予想されていた16.50~18.50ドルを上回る結果となった。

 24.40ドルで公開されたメイソウ株だが、15日は4.4%(88セント)上昇の20.88ドルで終了。同日中に24.90ドルの高値も記録していた。

「アメリカ上場を決めたのは、そこが多くのグローバル企業が上場している場だからです。私たちはビジネスモデルの継続的な発展を目指しており、目先の利益にはこだわっていません。アメリカ市場でその成果を出せるよう願っています」と、葉氏は株式公開に先立って行われた電話取材で話している。

 メイソウは、ソーシャルメディア「WeChat」も所有する中国のゲーム会社「テンセントホールディングス」の支援を受け、さまざまな商品をひとつ約1ドルで販売する日本の100円ショップを模した、従来式の実店舗型小売企業として成功を収めた。世界各国に3000店舗を展開し、その60%が中国本土にある。

 メイソウでは化粧品から小型家電にいたるまでさまざまな商品を販売しており、その大半は社内のデザインチームが製作している。同社は自らを、高品質の商品をお手頃価格で販売する小売企業とし、ウォータープルーフのアイライナーならほんの1.5ドル、香水は3ドル、サングラスは8ドルにも満たない価格で提供中だ。

 さらにブランドと提携し、ディズニーやマーベルから販売権を獲得した。知的財産権のある商品も取り扱っており、財布やバッグ、おもちゃなど、マーベルのスーパーヒーローやミッキーマウスを使ったアイテムを販売している。

 葉氏は2013年、家族と日本を旅行中に、日本のデザインの美しさに感銘を受けたことから、メイソウの創設を思い立った。

「日本には、家庭用品や家具を販売する生活用品店がたくさんあると知りましたが、中国にそのような店はなかったのです」と、同氏は言う。

 そこで、中国の優れた製造力を活用しながら、そこに優良なデザインを掛け合わせることで、高品質な商品を低価格で届けたいと考えた。

 eコマースが市場シェアを広げている時代に、メイソウはオフラインの小売業界に参入。

 同社を立ち上げる前、葉氏は10年間にわたり小売業に携わってきた経歴があり、業界には馴染みがあったため、実店舗型の方針をとると決めた。

「私たちがお届けする商品は、オフラインでの購買体験の方が適しています。お客様は商品を手に取って、その感触を確かめることができますが、それはオンラインでは得られない体験なのですから」と、葉氏は言う。

 いまのところ、メイソウはオフラインでの販売に注力するとしているが、かつては「淘宝(Taobao)」や「京東商城(JD.com)」をはじめとする中国のeコマースプラットフォームで、一部商品の販売を始めたこともある。葉氏はeコマースについて、今後もセールスチャネルのひとつとして除外するつもりはないとしている。

 上海に拠点を置くエージェンシー・チャイナで研究・戦略マネージャーを務めるマイケル・ノリス氏によると、メイソウは他社に負けない価格を追求し続けながら、デザインと品質のレベルを高めたことにより、消費者の人気を獲得した。

「ディスカウントショップ改革の先駆者となったのが、メイソウです。同社は毎週のように新商品を発表しており、買い物客が店舗を訪れるたびに目新しいものを見つけることができるので、オフライン・ファーストのアプローチが効果を発揮しています。オンラインのみの小売企業では、消費者がこれほどのレベルで新たな発見をしたり、偶然いいものに出会ったりすることは難しいでしょう」と、ノリス氏は指摘する。

 しかしそのメイソウの業績も、ほかの多くの小売企業と同様、コロナウイルスの流行中に落ち込みをみせた。

 中国国内の店舗は、1~3月のおよそ2ヶ月間にわたり封鎖され、同社の発表によると、収益は4%減少して90億元(約1410億円)に下がった。

 同社の目論見書によると、世界各国の店舗もまた、直営店とフランチャイズのどちらも今年の4~6月にかけて一時休業を強いられ、国外販売業者に対する売り上げに影響を及ぼすなど苦しい期間があった。

 メイソウは新規株式公開により調達した資金をもとに、店舗ネットワークを拡大し、テクノロジーや情報システムだけでなく、倉庫・物流にも投資を行う予定としている。

 同社の米国預託株式は、ニューヨーク証券取引所に「MNSO」のティッカーシンボルで上場されている。

By ZEN SOO Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP