全米で訴訟の電子タバコ「JUUL」、日本上陸を検討

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◆批判、訴訟で方針転換 信頼回復なるか?
 そもそもJuulは通常のたばこの喫煙者をターゲットにしていたが、フルーツやクリーム・ブリュレなどの甘いフレーバーで10代の若者に人気となり、子供のニコチン依存につながると大きな批判を受けてきた。すでにJuul Labsは州、学校区、10代の子供の家庭などから数百の訴訟を起こされている。

 同社は批判を受けて、2018年からはアメリカ国内でのミント、たばこ、メンソール以外のフレーバーの店頭販売をやめている。もっとも、フォーブス誌に寄稿した、がん研究者のビクトリア・フォスター氏は、これにより他社のフルーツ・フレーバー製品の売り上げが伸び、Juulの製品に関しても、フルーツ・フレーバーからミントとメンソールへの乗り換えが進んだだけだったと厳しい見方だ。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、2018年後半に380億ドル(約4.1兆円)だった同社の企業価値は、120億ドル(約1.3兆円)にまで下落している。9ヶ月前に就任した新CEOのK・C・クロスウェイト氏は、無謀な成長戦略、市場でのつまずき、規制当局との不安定な関係が失敗の要因と見ており、電子タバコへの信頼が失われ、業界の展望を傷つけたと話している。現在はほとんどの広告をやめ、人員整理をし、海外展開にもブレーキをかけて信頼回復を目指しているという。Juulの本来の商品コンセプトであった、「大人の喫煙者を減らす」に回帰し、長期戦の覚悟で臨むとしている。その一方で、社会問題化した若者のJuul利用に関しての責任にはコメントしなかった。

◆日本上陸か? 認可に課題多し
 WSJによれば、米食品医薬品局(FDA)は、評価のためすべての電子タバコ製造者に9月9日までに製品を提出するよう求めている。各社は申請書のなかで、電子タバコが通常のたばこより安全だと証明する科学的証拠を提示しなければならない。加えて電子タバコによってもたらされる国民の健康への利益が不利益を上回ることも示す必要がある。つまり、子供がニコチン依存症になる可能性があっても、大人が通常のたばこから電子タバコに乗り換えることによる利益のほうが大きいということを示さなくてはならない。

 FDAの評価の結果が、海外市場にも影響するとWSJは述べる。多くの国ではベーピング商品を禁止、または許可するニコチン濃度を低くして規制しており、Juulの参入は困難だ。昨年、海外進出を試みているが、各国の規制当局の協力を得ることなく行ったため、すでに韓国からは撤退し、欧州の複数の国々からも撤退計画中だという。この失敗を踏まえて、現在は科学的証拠を携えていくつかの国々と協議している。

 ブルームバーグによれば、Juul Labsは日本市場参入を検討しているという。日本では、ニコチンを含む電子タバコは医薬品に分類され、販売には許可が必要だ。同社の日本支社の社長は、保健当局の信頼を得て日本の1900万人の喫煙者にJuulを届けたいとしているが、認可されれば、売り方次第で若者の利用につながる恐れもある。

 CBCによれば、Juulが枝分かれする前から大麻吸引器を販売していたPax Labsが、Juulとそっくりな大麻用商品Pax Eraを発売した。電子タバコのJuulが日本で受け入れられれば、そちらに興味を示す日本人が増えることも予想される。Juulの日本発売には慎重な検討が必要だろう。

Text by 山川 真智子