抗議デモ支持をアピールする企業の「実態」は? アマゾン、ナイキら

AP Photo / Ashley Landis

 人種間の不平等を訴えるために街へ繰り出したシャロン・シューター氏は、黒人の命への熱い支持を表明する「きらびやかな」メッセージを掲げるコーポレートブランドの数に幻滅した。

 黒人女性を対象とした化粧品会社「ウオマ・ビューティ(Uoma Beauty)」の創業者であるシューター氏(33)は、企業の真意を試す運動をソーシャルメディア上で企画した。企業組織内の従業員と経営陣の人種別内訳を公表するよう、ブランドに促すためにインスタグラムでハッシュタグキャンペーン「#pulluporshutup(調べるか、さもなくば黙って)」を開始した。

 ハッシュタグは急速に拡散され、インスタグラムのフォロワー数は1週間で10万人近く増えた。黒人を職場で冷遇するような人種差別に対する沈黙や偏見があることを理解せず、また、真摯な対応を行わなかった多くの企業に対する警鐘であるという。

「熟考することは痛みを伴います。真実に苦しめられることもあります。多くのブランドはこのようなことを避けてきたように感じるのです」とシューター氏は話す。

 警官の暴行に対する抗議運動は、この2週間にわたって国内で広がりを見せている。AP通信は、最大手企業数社が公表したダイバーシティ(多様性)に関する報告書を精査した。いずれの企業も黒人従業員や黒人コミュニティとの連帯を宣言しているものの、マイノリティを採用し、その雇用を持続させ、そして昇進する機会を与えるための企業内努力は、自社が掲げる目標に対して不十分であることが判明した。

 マイクロソフトは、構造的な人種差別により自分たちの命がいかに奪われているかを描写した黒人従業員らの力強いメッセージを引用し、ツイッターへ投稿した。そのなかで、フィル・テリル氏はジョージ・フロイド氏の死について述べている。手錠をかけられ、ミネアポリスの白人警官に数分間にわたり膝で首を圧迫されながら息ができないと訴えた黒人男性の死は、世界中に抗議運動を引き起こした。

 同社のツイッターには、「みんなが連帯するきっかけを提供するために、黒人たちの死をこのように大々的に取り上げるべきではありません」というテリル氏の言葉が引用されている。

 2019年にマイクロソフトが発表した「ダイバーシティとインクルージョン(多様性とその受け入れ)に関する報告書」では、小売りや倉庫勤務を含め、各ブランドにおける世界中の全従業員のうち、黒人の割合はわずか4.4%であること、そして、アメリカ国内拠点の経営陣や管理職のうち、黒人の割合は3%未満であることが公表されている。

 マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏は、従業員に宛てたメールのなかで問題への取り組みを示した。世界を変えるための支援を行いたいのであれば、同社が「まず先に変わらなければいけない」と述べ、「歴史的黒人大学(HBCU)」との関係を深め、能力のある人材開拓に向けて投資していることに言及した。

「地球上すべての人を力づけるビジネスで成功を得るには、私たちが奉仕する世界について深く考える必要があります」と、ナデラ氏は話す。

 アマゾンは、ウェブサイトのトップページに「Black Lives Matter」を掲げている。そして、CEOのジェフ・ベゾス氏は、同社の姿勢を批判する消費者から送られた人種差別的なメールをインスタグラムで公開している。

 しかし、倉庫勤務の従業員から報告された新型コロナウイルス流行時の危険ともいえる労働条件をめぐって、同社は偽善的であると非難を受けてきた。AP通信による調査では、大半の都市における倉庫もしくは配送を担当する従業員の60%以上が有色人種であることが明らかになっている。また、アマゾンが2019年に発表した従業員データによると、アメリカ国内の管理職のうち、およそ60%を白人が占める一方で、黒人の割合は約8%であることが示されている。

 ニュージャージー州アヴェネルのアマゾン物流センターで、梱包済商品の仕分けを行うコートニー・ブラウン氏(29)は、黒人に対する正義と機会均等を支持するという同社のメッセージは偽りであると感じている。物流センターで働く同僚のほとんどが有色人種である一方で、上層部は白人であるという。

「黒人の女性として、これは空虚な言葉であるように思います。アマゾンは私たちを大変な困難から救うこともしません。みんな、私たちに加担することで利益を得たいのです」と話す。

 バージニア大学のローラ・モーガン・ロバーツ教授は、アメリカ国内の労働人口全体で黒人が占める割合は12%であるが、管理職においては8%にすぎないと指摘する。フォーチュン500社のうち、黒人のCEO数は2002年が最多で12名、いまやわずか4名である。

 ロバーツ教授は、ハーバード・ビジネス・スクール卒業生の経歴をたどる調査を行った。そこでは、世界的な活躍が期待されるような任務など、貴重な機会を得られる黒人卒業生は、同じ学位を取得した白人と比較するとごくわずかしかいないことが示されている。

「黒人卒業生は、『資格や能力は得ているものの、中枢部に踏み込むことができない』と話しています」と、ロバーツ教授は述べる。

 アディダスは、「Racism(人種差別主義)」の文字に取り消し線を引いた画像をインスタグラムに投稿し、フロイド氏の死とその後続く抗議運動に対する同社の立場を表明した。同時に、自社の改善すべき点として、多様性が欠如していることについて非難の声を上げる従業員が増えていることを認めた。

 アディダスは6月9日、人種間の不平等と闘うための方策をいくつか公表した。一例として、アメリカ国内のアディダスとリーボックに新設する役職にはすべて、黒人とラテン系の従業員で30%以上となるような人員配置を行うことを公約している。また、北米において取締役に登用する黒人とラテン系従業員を増やすことを、「あるべき姿」として目標設定したことを発表する予定だという。

「人種差別を助長する文化的、構造的な力に立ち向かうため、私たちに何ができるか。この2週間の出来事をきっかけに、みんな熟考を重ねてきました。自分自身や所属する組織の内面と向き合うこと、黒人や黒人コミュニティを不利な立場へ追いやり、沈黙を強いてきた構造について深く考えることが強く求められています」と、アディダスCEOのカスパー・ローステッド氏は声明のなかで述べている。

 ドイツを拠点とする同社は、人種や民族ごとの従業員数内訳を公表しなかった。

 ナイキは長らくの間、黒人消費者にとって「身内」ブランドであると見なされてきた。アフリカ系アメリカ人の有名スポーツ選手との高額のスポンサー契約は注目の的である。

 オレゴン州ポートランド界隈にある同社が、NFLのクォーターバックとして活躍したコリン・キャパニック選手を広告キャンペーンに起用し、人種間の不平等に真っ向から取り組んだことはよく知られている。先日、ナイキは抗議運動に寄せて新たな動画広告を発表し、「For once, don’t do it(これきりでやめよう)」と発信している。おなじみの「Do it (やってみよう)」をもじったメッセージを用い、「アメリカには何の問題もないフリ」をしないよう視聴者に強く訴えた。

 それでもなお企業の経営陣を見ると、ブランドが与えるイメージと実際の経営手法には相違があることがわかる。

 2019年にナイキが公表した経営陣についてのデータによると、アメリカ国内全従業員のうち半分以下の43%を白人が占めているものの、組織全体のバイスプレジデントについては77%が白人である。一方で、バイスプレジデントに就く黒人の割合は10%弱である。これでも前年比2%程度改善しているという。

 CEOのジョン・ドナフー氏は、この程度の進歩では十分でないと認めている。「最も重要な優先事項は、自分たちの会社を正すことだ」と、従業員に向けてメッセージを寄せた。

By SALLY HO Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP

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