ズーム、天安門活動家アカウントを停止 中国からの要請受け

Ink Drop / Shutterstock.com

◆IT企業のジレンマ? ズームに疑惑の目も
 AFPは、多くのハイテク企業が中国政府の要求に対処するのに困っており、巨大市場と独裁政権の間の板挟みになっているとしている。グーグルやフェイスブックは検閲のため中国市場参入をあきらめているし、アップルは市場を維持するため、アップストアからVPNアプリを削除するようにとの中国政府からの要請に従っている。ウェブメディア『Axios』によれば、LinkedInが2019年に、今回アカウントを停止された民主活動家、周鋒鎖のアカウントを「プロフィール内の特定の内容」のためブロックし、中国国内で見えなくしたこともあった。

 今回ズーム社が中国の要請に従ったことで、中国国内の規制だけではなく、国外での検閲が広がることが懸念されている。ワシントン・ポスト紙は、ズーム社の対応は習近平政権が香港における「一国二制度」の早期終了を達成するための助けとなっているように見えると述べる。また、アメリカにおいては、反体制派の活動家の自由を奪うものだとしている。ズーム社は「中国の法を変える力は自社にはない」というが、従うかどうかを決める力はあるはずだとし、同社の姿勢に疑問を投げかけている。

 Axiosによれば、新型コロナのパンデミックの間に急成長したズーム社と中国政府との関係に厳しい目が向けられている。同社は米企業だが、CEOのエリック・ヤン氏はアメリカの市民権を持つ中国出身者だ。製品開発もほとんど中国で行われており、カナダのトロント大学のCitizen Labは、多くの従業員を中国に抱えていることが、中国当局からの圧力に敏感になる理由ではないかとしている。台湾政府は安全上の理由からZoomの公式な利用を禁じており、ニューヨーク州の学校、米上院、ドイツの外務省も使用を推奨しない、または規制するという立場を取っている。

◆中国ユーザーもがっかり 利用に制限も
 中国政府の検閲の手が国外に伸びたことは、中国の一部のユーザーを落胆させている。ロイターは、すべて検閲されている中国国内のソーシャルメディアとは違い、Zoomは検閲を超えた世界へ続く窓だったと述べている。Zoomのモバイルアプリの中国でのダウンロードは、1月以来、昨年同時期から11倍と急増した。会合やカジュアルな会話のほかにも、愛国主義やフェミニズムなど、場合によっては敏感な話題を話し合うために使われてきたという。中国大手の別のアプリなどでは、そういった話題では参加者が話しづらく感じてしまうということだ。また、Zoomは国内アプリのアカウントを停止されている影響力のある人々とつながることができる手段でもあり、検閲が厳しくなれば代わりとなるサービスはほぼないと見られている。

 ロイターによれば、すでにズーム社はルール変更し、中国本土での新規ユーザーの登録を法人のみとし、無料ユーザーの会合主催は不可としている。中国人の外に開く窓は、ますます狭くなっている。

Text by 山川 真智子