売上高2.7倍、ビデオ会議の米ズームが急成長 時価総額6兆円超

Wilson Ring / Zoom via AP

 新型コロナウイルスのパンデミック下では、何百万という人々が自宅待機を余儀なくされてきた。この状況下で、同僚や友人、家族らとオンラインでミーティングや会議を行えるサービスを提供するズーム・ビデオコミュニケーションズ社が急成長を遂げている。ここへきて同社は、インターネットビジネスにおける巨大な金鉱脈を掘り当てたかたちだ。

 6月2日に発表された2-4月期の決算で、それ以前には明確な数字としては出ていなかったズーム・コミュニケーションズ社の天文学的な急成長ぶりが初めて数字で示された。この結果、同社はニューヨーク証券市場の注目株へと一気に躍り出た。

 同社の第1四半期の売上高は、昨年の同時期と比べて2倍以上となる3億2800万ドル(約350億円)。純利益は2700万ドル(約29億円)で、1年前の19万8000ドルから飛躍的な伸びを見せた。

 これらの数字は、すでに同社の高成長を予測に盛り込んでいたアナリストたちの期待値をも上回る水準だ。この発表を受けて、今年に入ってすでに3倍以上の急伸を記録していた同社の株式価格は、全体市況を表すS&P500指数が5%低下するなかでも、さらなる値上がりを見せた。

 好調な業績の発表を見込んで、6月2日の決算報告以前から大幅な値上がりを続けてきた同社の株式は、決算報告の直後、延長取引時間中にさらに値を上げた。しかしその後は急速に値下がりに転じ、3%以上の下落となった。この値下げの発端となったのは、同社の幹部らのオンライン討論のなかで、今年後半に新型コロナウイルスによる健康不安が解消された場合、新規ユーザーの一部が離れていく可能性があることを認める発言が出たことだ。

 今後通常の取引で売買が続いた場合でも、同社の株式は200ドル前後の価格で推移する見通しだ。これは、いまから約14ヶ月前の、同社株の最初の公募価格である36ドルに比べると、5倍以上の値上がりである。

 一連の値上がりにより、6月2日までの時点で、ズーム・コミュニケーションズ社の時価総額は約590億ドル(約6兆3200億円)に達した。この価格は、コロナウイルスの大流行によって旅行客が激減し、経営的に大打撃を受けたアメリカの航空会社最大手4社の市場価格の合計額をも上回るものだ。

「オンライン会議は、今後のサービスの柱になるでしょう」と、今年で創立9年目となる同社の設立者の1人、CEOのエリック・ヤン氏は予測する。ヤン氏はこのコメントをオンライン会議のなかで述べたのだが、同社の事業と好調な株に対する関心の高さを反映して、ピーク時には3000人以上の参加者数が記録された。

 ズーム・コミュニケーションズ社は今後も数ヶ月にわたって目覚ましい成長を続ける見通しだ。同社は、7月に終了する今四半期の売上高を約5億ドル(約540億円)と予測。これは昨年同時期の4倍以上にあたる。また年間売上高の予測値は約18億ドル(約1930億円)で、こちらも昨年比で3倍近い伸びを見込んでいる。

 しかし、ズームのユーザー数が急拡大を続けるなか、オンライン会議中に部外者による荒らし行為が発生し、外部侵入者の問題とユーザーのプライバシー保護ならびにセキュリティの脆弱性が指摘された。

 今年2月以降、世界各地の教育機関ではズームを使ったオンライン授業が広く実施されてきたが、このセキュリティに関する懸念を受けて、一部の学校は授業でのズームの使用を中止した。しかしその後、セキュリティ保護をよりいっそう強化する取り組みを同社が打ち出したことで、いったん中止を決めた学校の一部にも利用を再開する動きが出てきた。同社によると、現在オンライン授業にズームを導入している学校の数は、全世界で10万校を超えるという。

 ズームを使ったオンライン会議の参加者数は、5ヶ月前の時点で1日あたり1000万人だった。ところが、現在では1日に3億人を超える。ただし、一人の参加者が同じ日に複数のズーム会議に出席した場合、それを複数人としてカウントしている。実際、ここ最近の数ヶ月間で、そういった使い方をするユーザーが過去より増えている。

 初期の時点で問題となったプライバシー保護に関する脆弱さは、裏を返せば、誰でも非常に簡単にズームを使えたということだ。新型コロナウイルスの流行拡大防止のために大多数の国民が自宅待機を命じられて以降、オンライン授業やビジネスミーティングやオンライン飲み会を開くにあたってズームが人気を博した理由の一つには、その手軽さがあった。

 さらには、同社がズームの無料版を提供していることも大きい。それもまた、3月中旬以降、アメリカ国内で約4000万人が失業し、1930年代の大恐慌以来最悪の不況到来の危機感が増すなかでも、多くの人々にズームが支持された一つの要因だ。

 カリフォルニア州サンノゼに本社を置くズーム・コミュニケーションズ社は従来、遠隔地のオフィスに勤務する社員間のビジネスミーティング用途でズームの有料版を利用登録する法人顧客をメインターゲットとして収益を上げてきた。

 しかしパンデミックによる自宅待機命令が出て以降の数ヶ月で、ズームのおもな用途は、本来は同じオフィス内で働いていた社員らが在宅リモート勤務に使うツールへと変わった。

 今年4月末の時点で、ズームの法人顧客数(従業員数10名以上)は26万5400社。これは昨年同時期の4倍以上にあたる。また一方で、直近の四半期における同社の売上高の約30%は、従業員10名未満の法人ユーザーからもたらされたものだ。この数字は、昨年11月から今年1月までの期間中の20%より増加している。

 ズーム・コミュニケーションズ社としては、今後も法人顧客向けのサービス提供に重点を置く方針だが、CEOのヤン氏は、ソーシャルサービスと学習サービスでズームが利用されるすべてのシーンにおいて収益を上げる方法を探りたい考えだ。一部のアナリストは、同社はズームの無料版に広告掲載を始めるのではないかと予測している。ただし現在のところ、同社からそのような意向の表明はない。6月2日に行われたオンライン会議の席でも、ヤン氏は今後の計画の詳細には触れず、「私たちの前には多くの機会が開けています」と述べるにとどめた。

 今後のさらなる拡大を視野に入れた場合、同社はズームを使ったオンライン会議でのプライバシー保護に関してさらに充実した取り組みを進める必要があるだろう。その実現に向けて、ヤン氏は今年4月以降、オンラインセキュリティのスペシャリストとして名高いアレックス・ステイモス氏にコンサルティングを依頼している。ステイモス氏は、過去にはヤフー社とフェイスブック社での勤務歴を持つ。この2社もやはり、過去にはセキュリティとプライバシー保護に関する課題にそれぞれ直面していた。

 そしてまた、これまで成功を収めてきたズームの前には、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックの3社を含めた、はるかに規模を上回る競合他社とのこれまで以上に厳しい競争が待ち受けている。

By MICHAEL LIEDTKE AP Technology Writer
Translated by Conyac

Text by AP

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