コロナで変わるビジネスモデル 適応迫られる経営者たち

AP Photo / LM Otero

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で失われた売上を回復させようと、多くの経営者はビジネスの方法を変えようとしている。

 それは些細な変化のようにもみえる。衣料品店のオーナーがネット販売を強化するといった類のものだ。だがそうした見直しであっても、人員配置や技術、在庫などの大幅な変更に伴い、経営面も含めたビジネスモデル全体を再考しなければならない。

 企業によっては生き残りをかけた選択になることもあれば、危機的な状況下で希望の兆しになることもある。

 カリフォルニア州ガーンビルでカフェと食品販売を兼ねる小売店「ビッグ・ボトム・マーケット」を共同で営むマイケル・ヴォルパット氏は3月中旬に店を閉めた際、「手持ちのものを改めて見直し、事業をどう進化させていくかを考えなくてはならなかった」と話す。

 ビッグ・ボトムが開設しているオンラインマーケットプレイス「Etsy(エッツイー)」の集客につながればとフェイスブックでクッキングショーを始めたところ、大きな成功を収めた。1日あたりの訪問者数が66%増えたほか、ビスケットの詰め合わせ、コーヒー、保存食、Tシャツなどが次々と売れるようになった。今ではEtsyからの売上でビッグ・ボトムの月々の家賃、公共料金、保険料をまかなっている。

 カリフォルニア州ソノマにあるワイナリーを訪問した客が立ち寄ることの多いこのカフェは、社会的距離を保ちながら5月8日に営業を再開し、肉類や商品を店頭販売している。売上は通常期と比べて8割減、カフェの座席数は通常は40ほどだ。訪問客の大半は近隣住民だが、週末にはベイエリアからもやって来る。

 カフェの全面再開をいつにするかはヴォルパット氏もわからない。だが今後は、インターネットからの売上がかなり増えると予想している。Etsyでの販売を増やすためにスタッフを採用したほどだ。

 ダラスで衣料品店「ヴェルベット・ウィンドウ」の営業を始めたエイミー・ウィット氏は、4ヶ月後に休業を余儀なくされた。店を再開したときに顧客を呼び込むためには、ビジネスの方法を変える必要があると即座に考えた。

 ウィット氏は、「休業したことで『このやり方では何がおかしいのか、どのように直していけばいいのか』を自問する機会が与えられた」と話している。

 ウイルス感染が広がる前、売上の85%は店に直接来店する顧客からもたらされていた。閉店を機に売上を増やし、顧客と関わらなくてはならないと考え、ソーシャルメディアを積極的に活用して顧客をウェブサイトに誘導する必要があると実感した。ヴェルベット・ウィンドウがウェブ上で検索上位を獲得するにはどうすればよいか、スタッフと一緒に学んだ。すると、ダラス以外の地域からも新たな顧客が来るようになった。

 ウィット氏は店舗再開に向けた準備を進めながら、ウイルス感染拡大で刷新された小売環境で多くのサービスを提供し、うまく適応していかなくてはならないという結論に達した。その結果、ウイルス感染が引き起こす合併症のリスクがある人など、特定の顧客に限定した買い物の時間を設けた。動画やメッセージングアプリなどを活用することで、来店に抵抗を感じている人にもファッション商品を紹介している。カーブサイド・ピックアップ(注文品の駐車場での受け取り)や宅配サービスも利用できるようにした。

 新しい事業戦略にはこれらすべての取り組みが必要だとウィット氏は考えており、「いまのウイルス危機が収束した後も、このサービスを提供していく」と話している。

 現在、多くの企業でビジネスモデルの全面的な見直しや洗練化に向けた動きがみられる。成功を収めた経営者でさえ、環境への適応を検討することがある。だが危機が発生した場合には、事業の見直しを余儀なくされる。大不況のとき、企業は従業員をレイオフしなくてはならなかったが、その後の採用局面ではフリーランサーに目を向けた。それにより人件費を削減できたほか、経営者は柔軟性を手に入れた。

 コロナ禍が与えた経済的影響を考えると、今後数ヶ月、ビジネスモデルは相当変化していくだろう。人々がどれほど買い物、旅行、外食にお金を払うか、スポーツやエンターテインメントのイベントに足を向けるか、そして事業の制約となっている社会的距離確保の要請がいつ解除されるかなど、多くの不確実性がある。

 ウイルス感染が拡大する前、食肉専門店の「ダルタニアン」ではフィレミニヨンに50ドル(約5,400円)もの大金を支払い、ひな鳥やウズラなど風変わりな料理を楽しむような顧客がいるレストランに高級肉を販売していた。だがレストランが閉店したため、顧客の半分は自宅での調理もしくは裏庭でのバーベキューのために肉を買う人になってしまった。ニュージャージー州のユニオンを本拠とするこの企業は、大きめの肉や一頭分の肉をレストランに届けるのではなく、細かくカットして包装した牛肉や鶏肉を出荷するようになったのだ。

「レストランから注文を受ける肉と、消費者が自宅で調理する肉とでは、オーダーの種類がかなり違う」と事業を営むアリアン・ダガン氏は話している。食肉処理や包装の仕方が変わるという。

「感染拡大以前は全体の売上に占める割合が10%ほどだったeコマース事業の規模が、今では5倍に増えた」とダルタニアンのアンディ・ヴェルトハイム社長は語る。レストランが再開するまでの需要がどうなるか、また消費者は今後も自宅で調理をするかはわからないという。しかし、異なるビジネスモデルを採用する準備を整え、それに対応した人材を増やしていくとしている。

 職種によっては、危機というよりはセレンディピティ(偶然の産物)の結果として変化が起きることもある。法律事務所においては、屋内退避の要請により弁護士は顧客と話し合うのにオフィスではなくビデオチャットを利用せざるを得なくなった。

 弁護士であるキャサリン・ミラー氏は、離婚や家庭問題の仲裁も担当している。顧客は以前、オンラインでの会合に抵抗を感じていたが、ウイルス感染拡大の影響により状況が一変した。このような行動の変化を活用しつつ、ミラー氏は自身の仕事を増やしていく計画を立てている。

 ビデオ会議を導入すると、当事者たちが事務所に集まらなくてもすむのでスケジュール調整が簡単になるほか、弁護士も会合に参加するための移動が少なくなる。業務範囲もニューヨークおよびその北部近郊以外に広げられそうだ。

「ビデオ会議の素晴らしさを顧客に納得してもらうのは大変だと思っていた。ところが新型コロナウイルスのおかげで、そのような苦労をしなくてもすむ」とミラー氏は話している。

By JOYCE M. ROSENBERG AP Business Writer
Translated by Conyac

Text by AP

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