「クリーンな中華料理」NYのレストランが閉店 白人オーナーが犯した失敗とは

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◆誤解の数々、勉強不足が炎上の原因?
 クオーツは、中華料理が不健康というのは、うま味調味料のMSGの使用に対する誤解があるとする。MSGの健康リスクが疑われ始めたのは1960年代で、当時中国から移民して間もなかった研究者のロバート・ホー・マン・クォック氏が、中華料理を食べた後、「しびれ」「虚弱感」「動悸」などを感じるという意見を医学雑誌に投稿した。過度の塩分かMSGによって引き起こされたと同氏は推定し、症状は「中華料理店シンドローム」と名づけられた。

 実はMSGは1900年代に発見されたもので、健康リスクは今日では完全に否定されている。「ドリトス」など、人気のスナック菓子にも普通に使用されているが、いまだにアメリカではMSGは悪者だと認識されている(クオーツ)。

 もう一つの問題は、アメリカの中華料理が本場のものとはまったく違うことをハスペル氏が認識していなかったことだ。ニューヨークで人気の中華料理店のCEO、ジェイソン・ワン氏は、アメリカの中華料理は、移民が生計を立てるためにアメリカ人向けに作り替えた料理だとクオーツに説明する。ハスペル氏が示唆した中華料理のイメージは、歴史があり調理法も複雑、かつ質の高い材料を使う本物の中華料理とは違うという主張だ。

 さらに問題をややこしくするのは、食やフィットネスのブロガーがインスタグラム上に投稿した写真で広がる、「クリーン・イーティング」という困ったブームだとクオーツは述べる。これは、植物ベース、脂肪の少ないたんぱく質を摂り、精製された炭水化物や加工食品を避け、「悪い」材料を「良い」ものに差し替えようという考えだ。簡単に言えば、エスニック料理などの非西洋料理の伝統的バージョンは「非クリーン」ということを示唆している。だから、「クリーン」に作り替えた料理はオリジナルよりも優秀と捉えられることになるという。

 ほかの文化を取り入れることは、うまくやれば必ずしも文化の盗用にはならないが、「クリーン」を押し出すことで中華料理は汚いというイメージを与えたことが「ラッキー・リーズ」の失敗であり、無知で人種差別的と受け止められた理由だとクオーツは述べている。

◆閉店の運命だった?「クリーン」以外にも問題点が
 ニューヨークのタウン誌、The Villagerによれば、10月の時点では騒動も収まり、「ラッキー・リーズ」はグルテン、乳製品、小麦などを使わないアレルギーに配慮したメニューなどで、それなりの需要はあったようだ。ただ、量が少ない割には価格が高いと指摘されていた。

 口コミサイト、Yelpでは、星2.5となっているが(注:炎上したため、一時的にレビューは受けつけない時期があった)、おいしくないというレビューが圧倒的で、薄味という意見もあった。そもそも騒動がなくても、普通の中華料理に慣れた人々には物足りない味だったのかもしれない。

 ハスペル氏は、ホームページに掲載した閉店の挨拶のなかで、「料理と我々が作り上げた空間は誇りに思うが、多くのことが一体にならなければ、ニューヨークでレストランを成功させることはできない。我々が望んだように成功していたらなあと思います」と複雑な気持ちを述べている。

Text by 山川 真智子