プロフェッショナルたちの2020年昇給予測 消費税10%の影響はいかに

Photo by Joshua Ness

著:ジェレミー・サンプソン(ロバート・ウォルターズ・ジャパン代表取締役社長)

 10月に消費税が10%に引き上げられ、足元では消費の落ち込みも懸念されている中、プロフェッショナル(働き手)たちは来春の賃上げをどう見通しているのか、グロバート・ウォルターズが調査をした。

                                                                                                                 

◆消費税の使い道と消費動向
 高齢者支援中心だったかつての消費税の使途は、今回の消費増税では幼児教育無償化、高等教育の支援など全世代型へとが広がっている。その点では、20代~50代のプロフェッショナル(働き手)からの評価も悪くないのではと感じる。主な先進諸国の債務がGDPの4割から12割程度なのに対し、日本はGDPの2倍にあたる巨額の債務を抱える。今回の消費増税では、後代へと先送りされてきた債務負担を軽減するという試みももある。

 消費税は景気などの影響を受けづらく、税収が比較的安定しやすい。税収のもととなる、消費はというと、10月31日の政府発表では、消費増税の影響は「前回増税時ほどではない」といいながら、増税前から消費者マインドの弱まりが続いている。賃金が横ばいに推移しているなか、消費が拡大しづらい状況にあるようだ。

◆2019年の昇給はどうだったのか
 消費増税を前に、安倍首相は3%の賃上げを呼びかけたが、2019年春闘交渉の妥結結果は、ベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた月例賃金の引き上げ額は8,200円(前年は8,539円)、上昇率は2.43%(同2.53%)。引き上げ額、上昇率ともに3年ぶりに縮小した。そんな結果にフラストレーションが溜まる中、消費者でもあるプロフェッショナル(働き手)たちは来春の賃上げをどう見通しているのだろうか。



◆会社員、2020年の昇給に低い期待感
 今の勤務先での昇給をどう予感しているかを聞いたところ、調査に参加した2,465人の回答は「1~3%程度上がると思う」(33%)、「昇給すると思わない」(25%)、「4~6%程度上がると思う」(20%)だった。昨年までからの底ばいを見込んでいるのだ。4人に1人は昇給しないと思っている。消費税が上がっても、昇給がない。消費が冷え込むのも想像に難くない。

 転職すると、ほとんどのケースでは10~20%年収が上がるが、転職とほぼ同等の「11%またはそれ以上の昇給」を予感しているのは、回答者2,465人のわずか1割にとどまった。

◆「転職で重要視すること】に見る潮目の変化
 ロバート・ウォルターズが昨年(2018年)に実施した前回調査では、転職時に重要視するポイントとして「職務内容の変化」、「報酬アップ」、「勤務地」が順に上位につけた。しかし、2019年に実施した今回の調査では、1位「報酬アップ」、2位「昇格・キャリアアップ」、3位「職務内容の変化」と、「昇格・キャリアアップ」が2位に割り込んだのだ。また、仕事満足度に直結するポイントを正社員に聞いたところ、4位に「トレーニング」が食い込んだ。

 プロフェッショナルたちのなかでは、「キャリアを自分で築いていこう」という主体的なキャリアマインドが確実に広まりはじめている。


 これまでの新卒採用では、応募する学生は職種などを選ぶというよりも会社を選ぶため、就職というよりもいわば「就社」の概念に近かった。定年退職するまで1社に留まることで数十年の生活が安定すると考えられてきたのだが、年金2,000万円不足問題や、大企業の経営者が相次いで終身雇用の見直しに言及したことを発端に、「キャリアを会社に預ける」という考えから「長期的・自発的なキャリア形成」へとシフトされはじめている。

 グローバリゼーションやデジタル化の勢いが増し、産業構造にも大きな変化が見られる中、企業の投資は事業革新に向いている。変革を推進するためにリストラに踏み切る一方で、新しい分野への参入のためにこれまで自社にいなかった人材を積極的に採用する企業も少なくない。そうした動きにもプロフェッショナルたちは敏感に反応しているようだ。

◆昇給鈍化する会社に見切りをつけるシビアな視点
 「仕事の紹介があれば関心を持つか」を尋ねた質問では、最近転職した人を含む89%が「はい」と回答した。昇給が鈍化している中、大多数が転職を選択肢に捉えている状況のようだ。

 その背景には、先々への経済的な不安を少なからず感じているなかで、勤務先での昇給の鈍さにしびれを切らしていたり、産業構造の変化が著しいなかでグローバリゼーションやデジタル化に後れを取っていたり、事業に将来性が見えない会社に見切りをつけようといったシビアな視点が潜んでいるのかもしれない。

筆者プロフィール:
Jeremy Sampson(ジェレミー・サンプソン)
ロバート・ウォルターズ・ジャパン代表取締役社長。オーストラリア出身。大学卒業後、世界有数のホテルグループにて法人営業職に従事。その後スポーツ分野のマーケティング関連職などを経て、2006年ロバート・ウォルターズ・ジャパン入社。営業&マーケティング部門 インダストリアルチームのマネジャー、コマース&インダストリーズ部門のディレクターを歴任し、2018年9月より現職。

Text by Jeremy Sampson