「生ける伝説」ランドクルーザー、アメリカでなぜ苦戦しているのか?
♦︎オーストラリアの13分の1
しかし現在、アメリカでの販売実績は振るわない。年間販売数は3000台をわずかに上回る程度で、最大の市場であるオーストラリアの4万台と比較すると大きく見劣りする。CNBCは原因の一つとして、近年の高価格帯SUV車種の競争の激化を挙げる。およそ8万5000ドル(約930万円)からという値付けのランドクルーザーは、同じ市場セグメントに属するランドローバーやメルセデス、ポルシェといった競合とのシェア争いにさらされている。さらに、似たような性能でより価格を抑えたトヨタ・レクサスLXも同社のラインナップに並び、自社製品間で競合が起きている状況だ。
ランドクルーザーの販売数は現在、ピーク時の5分の1にまで減衰している。CNBCが公開したYouTube動画によると、1999年に1万8600台超を記録した販売数は、2年後には半分以下の約7600台にまで一気に失速した。ガソリン価格の高騰と景気後退により、この時期、SUV車のセールスは軒並み落ち込んでいる。しかし、ライバル車種のレンジローバーを見ると、2001年以降は順調な回復を遂げている。一方でランドクルーザーは低迷が続いたままだ。CNBCは原因として、トヨタブランドの購買層はSUVへのこだわりが薄く、より手頃な車種を好むためだと推測している。動画のコメントには「同じ金額を払うならば(同じトヨタの)レクサスブランドを選択した方が誇りを感じられる」という趣旨の意見も見られた。価格とトヨタブランドへの認識が釣り合っていないことを消費者は感じているようだ。
♦︎60年以上の歴史に幕か
このような状況を受け、トヨタはランドクルーザーの販売停止に踏み切るのではないかという観測が出ている。米モーター・トレンド誌の記者はインスタグラムへの投稿のなかで、ランドクルーザーが2022年以降、アメリカ市場から撤退するとの情報を得たと報告している。米国では1957年以来愛されてきた同車だが、利益の上がっていないレクサスLXに追いやられる形で姿を消すことになると述べ、怒りと悲しみをあらわにした内容だ。CNBCがトヨタに真偽を質したところ、将来の製品計画については回答しないとの返答を得たのみであった。
オートモーティブ・ニュース紙は、ランドクルーザーの終売は誤った判断だと批難している。行き先を選ばない全天候型ヴィークルを求めている購買層や、カヌーやキャンプ用具一式を丸ごと積み込みたいアウトドア派にとっては悲しいニュースとなる。復活への足掛かりとして同紙は、ランドクルーザーの原点回帰を提言している。1970年前後に製造されたランドクルーザーはいまだに人気があり、状態によっては中古車でも3万ドル(約330万円)以上の値がつくことも珍しくないという。当時のように実用本位のモデルに回帰し、さらに現代ならではの先進の安全装備を加えたならば、大規模なヒットを狙うことも可能だと同紙は予測している。
60年代に米トヨタを危機から救った伝説のランドクルーザーは運命の岐路に立たされている。
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