ベッドのみ家賃13万、それでも人気「ポッドシェア」 カリフォルニア

Nicolás Boullosa / flickr

◆プライバシーなしでも人気 複数のメリット
 創業者のエルビナ・ベック氏によれば、住人の多くは、20代後半から30代前半で、社会に出たばかりの若者や、別の町から引っ越してきた人が多いという。メディアはポッドシェアの物件にはプライバシーがないと指摘するが、CNNのインタビューに答えたサンフランシスコのポッドシェア住人の多くは、家賃以外にもメリットを感じている。

 まず上げられるのは立地だ。安い賃貸物件を一人で借りれば、どうしても郊外になり、通勤時間が2時間以上かかる場合もあるという。ポッドシェアの物件なら職場のすぐ近くに住める。敷金の支払いがいらず、いつでも退去できることも若者にとっては都合がいい。また、移民など納税記録やクレジットカードを持たない人々には信用スコアがないため、賃貸契約が結びにくいこともある。ポッドシェアならこういった心配から解放される。

 見知らぬ他人と暮らすという不安もあるが、コリビングで新たな人々との出会いも期待できる。また消灯は午後10時、住人以外の入館はお断りというルールもあり、コリビングを維持するための配慮もされている(CNN)。慣れればそれなりに快適と言えそうだ。

◆見せかけのシェアリングエコノミー、格差拡大の象徴?
 創業者のベック氏は、ポッドシェアは家賃高騰の副産物だと述べる。ホームレスの増加は、安価な住宅供給ができないような厳しい規制が影響していると指摘。同社はスペースを有効利用した新しいタイプの住宅を提供するとし、住宅も進化する必要があるとホームページで主張している。

 英ガーディアン紙のコラムニスト、アルワ・マダウィ氏は、「住宅も進化を」という考えには賛成するが、ポッドシェアは下宿を再ブランディングしただけなのではないかと疑問を呈す。CNNのコメント欄には、「ポッドシェアが示すのは近年の資本主義の間違いだ」「ステルス社会主義」といった批判的な意見も出ていたということだ。

 問題なのはポッドシェアが革新的でかっこよく見えるやり方で、貧困をお色直しするというトレンドの一部になっていることだと同氏は指摘。シェアリングエコノミーで物から解き放たれて現代的に生活できそうに思えるが、これが「不労所得生活者の資本主義2.0」だと気がついたときには、そんな気持ちにはなれないだろうと辛口のコメントをしている。

Text by 山川 真智子