「2000万円不足」を受けて、日本の会社員は何歳まで働くつもりなのか

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著:ジェレミー・サンプソン(ロバート・ウォルターズ・ジャパン代表取締役社長)

 金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが6月3日に発表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」において、「公的年金だけでは老後に2000万円生活費が不足する」と試算された。報告書では、65歳以上の無職夫婦家計の収支額が毎月5万円の不足に転じ、95歳まで生きると30年間でその不足額が2000万円にまで上ると試算されており、個人での貯蓄・資産運用を促している。この報告書を受けて年金を巡っての議論が過熱しているが、足元では30代、40代といった現役世代を含めて長期的な生活費の調達・確保への関心が高まっている。

 ロバート・ウォルターズ・ジャパンではこの報告書が公表された直後から1週間、20~60代のホワイトカラー正社員556人にアンケート調査をし、何歳まで働くつもりかを聞いた。結果は「65歳まで」が全体の37%と最も多く、次に多かったのが「70歳まで」(25%)だった。「71歳以上」(22%)と合わせると、実に9割近くが「少なくとも65歳まで」は働くといった意向を持っていることになる。65歳定年を導入する企業が増えつつあるなか、「60歳定年」の意識が薄まっていることは間違いなさそうだ。

                                                                                                                 

◆仕事人生をどの会社で終えるか
 では、その65歳までをどこの職場で過ごすのか。

 経団連の中西宏明会長は、今年5月の会見で「働き手の就労期間の延長が見込まれる中で、終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている。」と発言し、「外部環境の変化に伴い、就職した時点と同じ事業がずっと継続するとは考えにくい。働き手がこれまで従事していた仕事がなくなるという現実に直面している。そこで、経営層も従業員も、職種転換に取り組み、社内外での活躍の場を模索して就労の継続に努めている。利益が上がらない事業で無理に雇用維持することは、従業員にとっても不幸であり、早く踏ん切りをつけて、今とは違うビジネスに挑戦することが重要である。」と続けた。

 また、トヨタ自動車の豊田章男社長は、「今の日本をみていると、雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘し、このインセンティブがもう少し増えない限りは「終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べた。

 こうした終身雇用の限界や見直しに言及する声が大企業の経営層から度々上がったことへの反応なのか、アンケート結果は、「今の会社で」(24%)、「別の会社で」(48%)、「起業したい」(28%)となった。半数近くが転職を見込んでいるほか、起業への関心の高さが「今の会社」に留まるという声を上回るところにも、潮目の変化を感じる。

◆現役世代は危機感が薄い?
 話を「何歳まで働くか」に戻して結果を年齢別に見てみると、現役シニア社員の60代では「70歳まで」(53%)との回答が過半数を占めた。働きたい高齢者に対し70歳までの雇用確保を企業に求める「70歳継続雇用」が議論される中、過半数が70歳またはそれ以上まで働く考えを示したのは50代と60代のみ。「70歳」を視野に捉えた人は、20~40代の現役世代には少ないようで、ビジネスの中核を担う40代では50%、30代では38%に留まった。

 引退を間近に控えた50~60代が「70歳まで、それ以上」働く意向を見せている背景には、「まだ働いて社会との接点がほしい」という意識がありそうだ。高度成長期に幼少期を過ごし、バブルの最中に就職した50代にとっては、仕事が自分を物語る重要な役割を果たしているため、健康寿命まで現役でいたいという考えもあるだろう。しかし本音は「年金への不安」なのかもしれない。

 それでは、20~40代で「70歳またはそれ以上」が少数派なのはなぜだろうか。まだ定年まで数十年あるので、危機感が薄いとも考えられる。しかし、世代的な特性に目を向けてみると、一様にそうとも言えないように思う。

 当社の従業員やキャリア相談に訪れる若手層をみて感心することがある。今の20~30代は、実に器用に情報を収集し、自由に取捨選択をして生活の判断材料として取り入れている。また、何か新しいことを試すことにためらいを持たず、短い準備期間で行動を起こす感度の高い人も多い。そういった特徴に目を向けて今回の結果をみると、若手層は、資産運用やパラレルワークなど様々な可能性を視野に入れながら数十年後の未来に向けて選択肢の幅を広げたいと考えているようにも捉えられる。

 もちろん、世代だけでなく個々人の価値観によっても働き方に対する考えは千差万別だ。「人生 100 年時代」に向けて、あなたも何歳まで、どこで、どのように働きたいか、改めて考える機会にしてみてはいかがだろうか。

筆者プロフィール:
Jeremy Sampson(ジェレミー・サンプソン)
ロバート・ウォルターズ・ジャパン代表取締役社長。オーストラリア出身。大学卒業後、世界有数のホテルグループにて法人営業職に従事。その後スポーツ分野のマーケティング関連職などを経て、2006年ロバート・ウォルターズ・ジャパン入社。営業&マーケティング部門 インダストリアルチームのマネジャー、コマース&インダストリーズ部門のディレクターを歴任し、2018年9月より現職。

Text by Jeremy Sampson