「イギリスの悪路では……」トヨタ・カムリ、14年ぶりの英上陸、現地評は?

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◆一般用途には向かず?
 全世界で累計1900万台以上を販売してきたカムリは、とくにアメリカで販売数を伸ばしている。大型の室内空間が市場に受けているのだろう。しかしイギリスでのセールスは低調で、前述のように2004年に販売終了となっていた。新モデルについても、イギリスでの評判はやや厳しめだ。

 英テレグラフ紙はアメリカでもっとも信頼されている車だと述べ安全性能を評価した上で、アメリカやアジア向けの車だと結論づけている。難点の一つはデザインだ。新型カムリはボディに刻まれた複数のラインと大型のフロントグリルが特徴的だ。30フィート(約9メートル)離れて見るぶんには高級感を感じるが、10フィートから見ると、やはり30フィートの距離から見るようにデザインされていることに気づく、という辛口のコメントを記事では紹介している。また、イギリスの悪路でテスト走行したところ、安定性に欠けたこともマイナス評価となった。

 英BBCが放送する自動車番組『トップ・ギア』のサイトでは、静音性に優れ経済的だが、いかんせん退屈なモデルだと結論づけている。目立った特徴がないことが仇となったようだ。また、手動で給電しなくて良い「セルフチャージング」システムについても、充電機能が欠けていることを耳ざわり良く言い換えただけ、と厳しい評価だ。

◆ライドシェアに最適
 イギリスでカムリが売れるとすれば、それはUberなどのライドシェア業界内に留まるかもしれない。テレグラフ紙は、ブランドにこだわらない商用車のドライバーに売り込むのではないかと分析している。トヨタの現地法人は、年間販売台数500という極めて低い数字を挙げている。快適で車内空間も広いが、いかんせん全般にニューヨークを走るタクシーのような印象を与える、と同紙は述べ、一般受けは厳しいとの認識を示している。

 一方で、イギリスの自動車専門誌オートエクスプレスは、その大きさと燃費の良さなどを長所として挙げる。さらに、クロムとウッドパーツを採用したインテリアも高級感に溢れる。同様にトップギアも快適な居住空間とサイズの割に良好な燃費性能に注目している。ライドシェアのオーナーが導入すれば、余裕のあるリアシートは乗客に快適な乗車体験をもたらし、運転席の広いレッグルームも長時間乗務するドライバーへの負担を軽減してくれそうだ。

 カムリについては、アメリカのUberドライバーにもっとも使われている車種との調査結果も出ている。デザインとイギリスの悪路への順応性で評価を落としたカムリだが、実用性重視の業界には燃費の良さと居住性がアピールするだろう。

Text by 青葉やまと