空のジェンダー格差に変化? 女性パイロットが増加の兆し
◆インドだけ違う? パイロットは女性向き
ビショップ氏によれば、世界でもっとも女性パイロットが多い国はインドで、13%に達しているという。インド国内の空の需要は、昨年上半期で22%も増加しており、スパイスジェット、インディゴなどのローカル航空会社が、女性パイロットを大量採用している。
インドは2012年にG20でもっとも女性が暮らしにくい国とされており、女性パイロットの増加は意外だ。ビショップ氏は、増加の裏にはインド特有の事情があると説明する。実はインドではパイロットの給与は労働協約によって規定され、飛行時間と年功序列によって決定されるので、男女差が入り込む余地はないという。その結果、若いインド人女性たちは、評価が高いうえに給料もいい、自国では数少ない職業の一つとしてパイロットを捉えているそうだ。
◆ハードルは高かった 試練を乗り越えた日本初女性機長
一方日本ではまだまだ女性パイロットは珍しい。調査会社スタティスタが発表した2018年の主要航空会社別の女性パイロットの占める割合を見ると、上位17社のなかに日本の航空会社はない。17位のノルウェー・エアシャトルでも1%ほどで、日本はそれ以下ということになる。
日本初の女性旅客機機長となった日本航空(JAL)の藤明里機長は、空への「壁は高かった」とCNNに話している。当時は女性パイロットなど聞いたこともない時代で、自衛隊も女性にはパイロットの道を開いていなかった。国内の養成学校では身長が足りなくて入学できず、結局アメリカでライセンスを取っている。帰国後JALの子会社の訓練生に採用されたことでチャンスを掴み、2010年に日本国内で初となる旅客機の女性機長に就任。現在は指導者としても活躍している。
◆先入観をなくせ 女性の挑戦は続く
藤機長は、日本で民間航空会社のパイロットになるなど、前例がなく不可能だと男性たちに言われたとCNNに語っている。ビショップ氏は、女性パイロットが育たなかった理由は、男の子には小さいころから機械に触れて手を汚し、実験を試みることを促すのに、女の子にはそういったことが必要ないとする世の中の考え方も影響したと見ている。そして機械には向かないと教えられて育った女性が、パイロットのような機械に関連する仕事でキャリアを積むことは、容易ではないとしている。
2035年には、空の需要は現在の2倍の規模になると見られている。パイロットのみならずエンジニアの分野でも女性の進出は必要であり、科学やテクノロジーを学ぶ女性をいまこそ増やすべきだという声もある。日本の場合は、少子高齢化で働き手も減りつつあるだけに、男性独占の職業への女性の進出は、歓迎されるべきだろう。
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