グローバル人材にみる賢い休み方 ワークライフに対する考えを「アップデート」

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◆仕事の生産性と生活の充実を両立。ワークライフに対する考えを「アップデート」
 テクノロジーの進化で、制限されなければ永遠につながり、働き続けることができる時代になった。世界中どこにいてもグローバル市場に向けてビジネスが成せることから、メールも、Web会議も受け入れてしまえば時差に関係なく24時間対応を強いられかねない。

 そうした懸念から、米ニューヨーク市では勤務時間外のメール業務を規制する条例案が審議されるなど「つながらない権利」への注目が高まっている。フランス、イタリアでは「勤務時間外の完全ログオフ権」に関する法律が成立し、ドイツでは長期休暇中に受信するメールを受信拒否または自動削除などができるシステムを導入する企業が出ている。

 デジタル化にともなってビジネスのスピードは加速を続けている。先述の有給取得率の話にも通じるが、そうしたビジネス環境の中でつながらない権利を守るには、部署・チーム内での情報共有と引継ぎの徹底が不可欠だろう。職場の人材・リソースの充足感は会社の規模、業種、地域などによって千差万別だ。しかし「個人努力に頼る」という旧来の生産性マネジメントは、限界を迎えている。

 また、休暇中につながりたくないかについては職責や仕事内容によって意見が分かれそうだ。経営者なのか、イノベーションを生み出す開発者なのか。ライフステージや年齢によっても違いそうだ。若手の中にはキャリアを最優先にしたいと考える人もいるだろうし、定年前後のシニア層では時間に自由が利きやすい人もいるかもしれない。介護・育児を担っていればオフラインになる時間が当然必要だ。私自身も移動時間、生活内の待ち時間などを有効活用して簡単なメールはさばいてしまいたい。そのほうが生産性が上がると考えている。仕事とパーソナルな生活の間仕切り・切替えを重視するという考え方もあるが、反対に、会社での仕事・社会との関わり・自身の生活を上手く融合させて合理化することで仕事の生産性と生活の充実を両立させるワークライフ・ブレンドというアプローチを支持する人も増えている。職場にイノベーションを生みやすい空間を作ったり、リモートワークを推奨するのも、その一例だ。重要なのは、会社にも個人にもチョイスがあることだと考える。

 前出の当社調査では、71%の人が自身の個人的な用事・手続きに有給を使っていると答えた。役所・銀行・免許更新などの手続きも通院もほとんどが平日昼間にしかできないためだ。短時間で済むような手続きや用事は勤務時間内に処理でき、その分、勤務外の時間帯にメール処理・電話会議をして補うなどといったワークライフ・ブレンドの働き方も選択できれば、有給取得時の「休みの質」も上がり、仕事の生産性と生活の充実に効果をもたらすのではないだろうか。

 残業上限などの労働規則を尊重しながら、会社が基本方針を設け、ワークライフ・ブレンドのメリット・デメリットも十分に説明された上で運用されれば、多様なライフステージ、価値観に合う働き方ができるのではないだろうか。

筆者プロフィール:
Jeremy Sampson(ジェレミー・サンプソン)
ロバート・ウォルターズ・ジャパン代表取締役社長。オーストラリア出身。大学卒業後、世界有数のホテルグループにて法人営業職に従事。その後スポーツ分野のマーケティング関連職などを経て、2006年ロバート・ウォルターズ・ジャパン入社。営業&マーケティング部門 インダストリアルチームのマネジャー、コマース&インダストリーズ部門のディレクターを歴任し、2018年9月より現職。

Text by Jeremy Sampson