2020年からの国際社会で活躍 「グローバル人材」に今からでもなれるのか

Ekaterina Pokrovsky / shutterstock.com

著:ジェレミー・サンプソン(ロバート・ウォルターズ・ジャパン代表取締役社長)

 私がこの国でグローバル人材の転職支援に携わって13年が過ぎた。当初、私たちがバイリンガル・スペシャリストと呼んでいた人材も、「グローバリゼーション」という言葉と共にこの数年で加速するグローバル化を受けて、「グローバル人材」へと変えてきた。

 そもそもグローバル人材とはどんな人物像なのか。英語ができれば十分なのか。それとも海外で暮らしたり働いた経験がなければ日本ではグローバルスタンダードな仕事はできないのか。そして、なぜグローバル企業は彼らを雇いたがるのか。

                                                                                                                 

◆グローバル人材は解なのか
 2020年から先の日本で、更には国際社会でAI・ロボットに仕事を奪われずに活躍できる人材になるには、どんな人物になればいいのか?私が長年キャリアアップを手伝ってきた数千人、当社が転職を支援する年間数万人のグローバル人材、グローバル企業各社が「2020年から先のために雇いたい」と口にする人物像にはいくつもの共通点が浮かぶ。

 まずは優れたハードスキルとビジネス経験を持つこと。他人とは違う、ユニークなスキルがあればなお良い。例えばAIの商用化に携わったとか、半導体を売り込んだ、マーケティングの年間プランを立てた、金融規制やブロックチェーン技術の知識があるなどだ。

 次に英語ができること。ネイティブスピーカーのような調子で流暢に語彙に富んだ英語が話せなくとも構わない。過去5年の間に当社を使ってグローバル企業に転職した554人の調査でも、47%が自分の英語力はビジネスレベルだと評価した。次いで多かったのは流暢レベルの27%。ネイティブレベルはわずか7%だ。ビジネスシーンで論理的に意見を述べられ、熱意を伝えられれば十分だろう。

 次に、イニシアティブを取る起業家精神だ。仕事に向き合うとき、上司・クライアントの指示を待っているのではなく自らオーナーシップを持って、自発的・戦略的に行動を起こす姿勢が、いまの日本では英語力以上に欲しがられている。年功序列や終身雇用がなくなるなど著しく変動する今、オーダーテイカー(指示・要望を貰うのを待つ人)でいるメリットはほとんどない。

 こういう話をすると、大体いつも海外経験は必須かという質問が出る。グローバル人材となるために、海外経験はとても有益だが、必須とは言えない。海外経験は多くの視野や技術や経験をもたらすが、同時に私達は、海外経験のない人も多く転職支援している。日本企業にも、海外経験がなくとも、英語を話し、グローバルビジネスに携わっている人は多い。前出の調査でも、大学などへの正規留学、親の駐在などによる帰国子女、就労経験がある人はそれぞれ全体の1~3割しかいない。旅行・出張程度の経験しかない人も少なくないのだ。

 MBAなど大学院における教育も、グローバル人材となるために最も重要なものではないと考える。あなたが何を知っているか何を勉強したかよりも、何ができるかが重要だ。MBAを組織の上層部に就くためのエレベーターかのように見る人もいるが、必ずしもそうではない。ビジネススクールで学べば示唆や知識、ビジネスにおいて重要な広い視点を得られるだろう。しかし科学、工学などを除けば、大学院への進学・履修そのものが昇進への鍵を握るとは言えない。

◆2020年からの国際社会で、見失いたくない2つのこと
 日本はかつて世界最大の経済国ともいわれていたし、今も名目GDP 3位の経済大国に変わりない。日本には日本市場のビジネス慣習があり、特に製造業ではモノづくり大国としてのプライドがあり、日本伝来の誇り高きホスピタリティ、おもてなしの心が息づいている。これらは日本にとってかけがえのない、大切に継承していかれるべきヘリテージだ。

 テクノロジーの進化は日本の雇用・転職市場に確かな変化をもたらしている。例えば、AI・ロボットの進化と普及で人間の仕事の数割が奪われるというAI脅威論がある。しかし、人口減に向かい立つ日本では、こういった先進技術のおかげで、危険をともなう作業から人が解放される、身体的負担が軽減されるなど働く環境が善くなるではないだろうか。生産ライン、介護、調理、建設現場など、人手不足の著しい職場では人の手から溢れ出ている分の仕事を機械が代わりに担ってくれる。結果的に人間の仕事は今よりももっと豊かになり、人間独自の能力・資質を活かせるものになるはずだ。仕事が可視化され、業務時間の長さではなく生産性で評価されるようになれば、パラレルワークのように仕事と生活の共存が今よりも自由になるかもしれない。

◆仕事が人生にもたらしてくれるもの
 実は、グローバル人材にはもう一つ共通点がある。それは自らの成長とチャレンジへの貪欲さだ。

 自分の仕事で社会に名を刻みたい、昇給・昇進を自ら求めていきたい、そのためのリサーチ・学び・準備は徹底したい。このように自分のキャリアに対してもただチャンスを待つのではなく、自発的に動く。「成長」と「チャレンジ」が彼らのキーワードなようだ。

ロバート・ウォルターズ

 仕事が人生にもたらしてくれるのは何なのか、私も「挑戦」と「成長」がその答えだと思っている。何か新しいものに挑戦するとき、人は必ず何かを学ぶ。好奇心を持ち、変化に対応する力を会得し、新しい経験を積む。同時に心の中にある「恐怖」を乗り越える。そして成長につながる。現状に満足せず、挑む姿勢もまた、グローバル企業が欲しがる資質だ。

ロバート・ウォルターズ

筆者プロフィール:
Jeremy Sampson(ジェレミー・サンプソン)
ロバート・ウォルターズ・ジャパン代表取締役社長。オーストラリア出身。大学卒業後、世界有数のホテルグループにて法人営業職に従事。その後スポーツ分野のマーケティング関連職などを経て、2006年ロバート・ウォルターズ・ジャパン入社。営業&マーケティング部門 インダストリアルチームのマネジャー、コマース&インダストリーズ部門のディレクターを歴任し、2018年9月より現職。

Text by Jeremy Sampson

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