南アフリカ、期待される社会起業家 その可能性と課題点

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 社会起業家も含む「社会経済セクター」による南アフリカ経済への貢献が注目されている。2017年から南アフリカ経済開発省は、国際労働機関(ILO)とベルギー国フランダース政府の協力で、社会経済セクター政策に関する国家プロジェクトに取り組んでいる。貧困問題が根強い南アフリカにおいて、包摂的な成長を目指し、ビジネスを通して社会問題の解決に取り組む起業家を育てる環境を作るのが目的だ。

 南アフリカにおいて社会起業家は財政危機に直面している政府に代行して貧困層向けサービスを行う機会がある。しかし、社会起業家の認知度、資金調達、事業体の法制化などの問題点が残る。

◆社会起業家の事例
 南アフリカの経済は厳しい状況にある。南アフリカの失業率は27.5%。英誌エコノミストによると、青年失業率は57.4%と極めて高い。南アフリカ財務省によると、財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は4.3%以上になると予測されている。多くの州政府も財政難に陥っており、公共サービスの提供が困難になってきている。

 そのようななかで、民間企業が政府に代行して貧困層向けのサービスを提供する社会起業家のニーズは高い。

 近年の南アフリカにおける社会起業家の事例としては、低額私立学校のSPARK Schoolsや低額医療サービスを提供するU-Care Medical Centreなどが挙げられる。これらは非営利団体ではなく、社会問題の解決に取り組むビジネスだ。

 南アフリカの公立学校の教育水準は世界的に見ても低い。2016年に発行された世界経済フォーラムのレポートによると、算数・理科の教育水準ランキングで南アフリカは139ヶ国中139番と世界最低だった。

 SPARK Schoolsはヨハネスブルグが位置するハウテン州を中心に低額私立小学校を20校経営している。今年からは高校も一校加わった。従来の集合学習とeラーニングを併用する教育方法「ブレンデッドラーニング」を取り入れ、質の高い教育を低額で提供している。年間の学費は2019年で2万3000ランド(約18万3000円)。現地の私立小学校の約4分の1だ。

Text by 中川沙和