リゾートホテルが「スマホからの解放」を後押し 宿泊費割引や特典も

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 あなたは、果たしてスマートフォンから解放された休暇を取得できているだろうか? ますます多くのホテルが、そんなあなたのための支援に乗り出している。

 数時間スマートフォンに触れずにいられた利用客に対し、シュノーケリングツアーやスモア(訳注:キャンプファイヤーなどの焚火を利用してつくる伝統的なデザート)などの特典を提供するリゾートがちらほら登場している。プールでスマホを使わない時間帯を定めるリゾートもあれば、公共の場で携帯端末を使うことを完全に禁止するリゾートもある。

 携帯機器の使用を制限しているホテルでは、インスタグラムやフェイスブックでユーザーが価値ある投稿を行う機会を失う恐れがある。しかしホテル側は、この方針は健康とリラックスを促進するという使命を反映しているという。そしていうまでもなく、しばし携帯機器の電源をオフにする幸せな時間を味わったゲストたちが、いつかまた戻ってきてくれることをホテル側は願っている。

 ウィンダムホテルの最高マーケティング責任者であるリサ・チェッチオ氏は、「誰もが皆、携帯機器の呪縛から逃れたいと考えており、そのために、一歩踏み出す小さな勇気を必要としている」と語る。

 人々は、今や片時も携帯機器を手放すことができない。この事実が深刻な問題になりつつある。技術コンサルティング企業のカウンターポイントリサーチが2017年に実施した世界的な調査によると、スマートフォン利用者の半数は、1日に3時間から7時間も携帯端末と向き合って過ごしていることが明らかになった。非営利団体のコモン・センス・メディアが実施した別の調査では、10代の若者の78%、およびその親たちの69%が、少なくとも1時間に1回は携帯端末を確認すると回答した。

 ウィンダムホテルのマネージャーは、ビーチでスマートフォンを眺めながら過ごしたいすべての客の要求に応えるため、ビーチチェアの増設を申請した。このとき、同ホテルはこの深刻な問題を認識した。「リゾートを訪れる宿泊客は、平均して3台の携帯端末を持参し、12分毎に、もしくは約1日に80回画面を確認している」ということが明らかになったのである。

 10月1日、アメリカにあるウィンダム・ホテル・グループ傘下の5つのリゾートホテルチェーンは、宿泊客がスマートフォンを鍵付きの柔らかなポーチに入れることに同意した場合、プール脇の特設コーナーでスナックの食べ放題や次回使える宿泊無料チケットが当たるキャンペーンを開始した。宿泊客はスマートフォンを自分の手元に置いておくことができるが、ポーチを解錠できるのはホテルのスタッフだけだ。

 ウィンダム・ホテル・グループによると、これまでに250人の宿泊客がフロリダやテキサスのリゾートでこのポーチを利用したという。来年、このプログラムがさらに多くのウィンダムホテルで実施される予定だ。

 ウィンダム・ホテル・グループは、家族連れの宿泊客らが携帯端末をタイマー式のロッカーに収納することにした場合は、宿泊費を5%割引するキャンペーンも実施している。同ホテルは、バリエーションが豊富な選べる枕、スモアなどのデザート、就寝時に読む本、そして、大人も子供も楽しめるインスタントカメラなどを提供し、宿泊客がスマートフォンに触れずに過ごすことで新しく生み出される時間を有意義に使えるような配慮にも余念がない。

 コネチカット州ニューブリテンの学校で広報部長を務めるマシュー・カナター氏は、ホテル側のこの配慮に感銘を受けた。カナター氏は、テクノロジーが2人の子供にもたらす影響に懸念を抱いており、家族が全員で食卓を囲む間は、携帯機器を手の届かない見えないところへ置くよう約束事を定めている。

「スマートフォンから離れる様々な機会を設けることはとても素晴らしい。人々が心に決めたことを実行に移し、それを習慣化するために、ときに何かを強いられることもある」とカナター氏は語る。

 メキシコのグランド ベラス リビエラ ナヤリットでは、いわゆるデトックスコンシェルジュがおり、宿泊客の持参した一連の電子機器を「一掃」し、ジェンガやチェスなどのゲームと交換してくれる。姉妹リゾートのグランド ベラス リビエラ マヤでは、宿泊客が携帯機器をフロントに預ける代わりにシュノーケリングなどのアクティビティを無料で楽しむことができるブレスレットを配布している。そして、宿泊客が少なくとも4種類のアクティビティに参加すれば携帯機器を返却してもらえるという仕組みを設けている。ホテルのロビーにはタイマーが設置されていて、宿泊客らがどれだけ長い時間、携帯機器から離れていられたかが分かるようになっている。

 エミリー・エバンスさんは、スマートフォンから離れていることのできた人に特典が与えられるというアイデアをとても気に入っている。イースタンケンタッキー大学の4年生であるエバンスさん自身は、休暇中はスマートフォンのバッテリー残量をさほど気にせずにいても何とかなるが、同性の友人たちは四六時中スマートフォンのチェックを怠ることがないという。

 エバンスさんは、「ミレニアル世代の若者たちの大半は、自分の食べた料理の写真をインスタグラムやスナップチャットに投稿しようと躍起になるよりも、値引きやお金の節約につながることを優先すると思う」と語る。

 ハイアットが所有するミラバル・アリゾナ・リゾート&スパでは、家族で過ごす時間よりも、マインドフルネスや平穏な時間がより重視される。ミラバルは、まもなくさらに2つのリゾートをテキサス州とマサチューセッツ州に開設するが、大半の公共の場でスマートフォンの使用を禁止する。

 宿泊客は、携帯機器を柔らかい綿製のバッグに入れて、客室にある所定の木製の場所へ置くよう奨励される。ホテルの従業員が着けている名札には、携帯機器の電源を切り、「今という時間を大切にしましょう」という宿泊客に対する呼び掛けの文言が書かれている。

 リゾートの中には、携帯機器の使用を全面的に禁止するよう奨励するところもある。アフリカのサファリツアーを運営するウィルダネスリゾーツは、キャンパス内の多くの場所で意図的にWi-Fiサービスを提供していない。エジプトのシワ・オアシスにある客室数40室のホテル、アドレアメラは、宿泊客がスマートフォンを部屋に持ち込むことを許可しているが、客室には電気が引かれておらず、Wi-Fiサービスの提供もない。

 リゾートで休暇を楽しむすべての行楽客が、携帯機器から解放されたいと願っているわけではない。スマートフォンは、カメラ、音楽プレーヤー、旅行ガイド、さらに、電子書籍リーダーとしての役割も兼ねている。また、スマートフォンは災害時には不可欠であろう。

 AARP(全米退職者協会)フロリダで通信管理者を務めるデビッド・ブランズ氏は2つのスマートフォンを使い分けている。ブランズ氏は、勤務時間後は仕事で使うスマートフォンをチェックしないようにしているが、個人のスマートフォンをどこへ行く場合にも持ち歩いている。

 ブランズ氏は、「私はやみくもに何かを禁止されるのは好きではない。しかし、料金を払い、親身になってくれる人から言われたことであれば、その通りに従いたいと思う」と言う。

 インドネシアのバリ州にあるアヤナリゾート&スパは、このような考えに理解を示しており、宿泊客の要求に折り合いをつけている。午前9時から午後5時までは、流れるリバープールではスマートフォンの使用を禁止している。しかし、それ以外の時間帯であれば、宿泊客に対し写真を撮ってソーシャルメディアに投稿するよう積極的に奨励している。

By DEE-ANN DURBIN, AP Business Writer
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP