最も高給・有利な大学の専攻は? あえてエリート校を狙わないという選択も

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◆あえてエリート校を狙わないという戦略
 STEM分野の就職の有利性が顕著なだけに、この領域を専攻できる大学であれば必ずしもエリート校に進学する必要はないとの見解も出ている。ペイスケール社のコンテンツ戦略担当副社長であるリディア・フランク氏は、一例としてエンジニアリングの分野を専攻する場合、分野への需要が非常に高いことから、ランクの低い大学を出たからといってキャリアの足枷となることはないと説明している。そのため、高額な学資ローンが必要となるエリート校をあえて選択する必要はないという。一方、低賃金の分野への就職を考えている場合は、大学の知名度と卒業生のネットワークが有利に働くことから、名の通った大学を出る利点が大きいようだ。

 では、希望の学部に進学できなかった場合は、大学で学業を修める意味はないのだろうか? バンクレート社の記事は、それでも大学を出ることに意義はあると説く。大卒者の方が就職率・給与水準ともに良い傾向にあるため、高い学費を支払う価値はあるとしている。また、専攻と就職先は必ずしも一致しない、とコネチカット大学の専攻体験制度の担当者は説明している。例えばビジネスの分野に就職したければビジネスの学位が必要だと考える学生が多いが、実際は歴史や英語専攻を経てこの分野に就くことも珍しくないという。同大学では複数の専攻を体験してから希望する専攻を本格的に履修できるよう、専攻体験制度というシステムを導入している。専攻の重要性の認識が高まっているようだ。

◆男女格差の原因に
 専攻分野の選択が将来的な給与増の鍵を握ることが明らかになったが、裏を返せば、現在アメリカで問題視されている男女間の給与格差は、すでに大学での専門分野の選択時からスタートしているとも捉えることができる。NBCニュースは、男性を1ドルとした場合、女性は76セントという平均給与の格差を紹介している。原因の一つとして、高収入につながるハイテク分野を大学で専攻する人には男性が多く、低収入の社会科学や一般教養の科目には女性が多い傾向がある。2017年のグラスドア社の調査では、収入の多い上位10の職種のうち9つは男性が多い専攻分野だというショッキングな結果が発表された。女性がSTEM分野を志望すれば解決するようにも思えるが、実際にはこの分野で歓迎されない風土があるなど、問題は単純ではないと記事は指摘している。

 仮にSTEM分野を専攻することができても、男性との給与格差は依然存在する。CBSニュースは、女性は生まれつき数学や科学に向いていないなどというバイアスに抗うのは難しく、男性が支配的な分野に女性が就職しても、賃金は低くとどまる傾向にあると述べている。

 男女格差の問題は解決が望まれるが、いずれにせよ一般的な傾向として、高収入を目指したければSTEM分野を専攻することが有利に働くようだ。

Text by 青葉やまと