創業者2人が辞任するインスタグラム、どこへ向かうのか?

AP Photo / Jeff Chiu

 2012年、フェイスブックが写真共有サイトを運営するスタートアップ企業だったインスタグラムを、ケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏から買収した。同社のアプリをこよなく愛するファンたちは、ソーシャルメディアの巨人フェイスブックの傘下でインスタグラムは一体どのようになってしまうのだろうか、と大いに心配した。

 幸いその心配はいずれも杞憂となった。しかし、インスタグラム共同創業者の2人が同社の今後の幸運を祈りながらも辞職理由を曖昧にしたまま去った今、当時の心配が再び沸き起こりつつある。例えば、「インスタグラムは消えてしまうのだろうか?」「広告や人々の近況報告で雑然としたサイトになってしまうのか?」「親会社のフェイスブックがやっているように、広告のために個人データが吸い上げられてしまうのだろうか?」「クールさがなくなってしまうのか?」などの懸念だ。

 なかでも最大の心配事は、「第2のフェイスブックになってしまうだけなのか?」というものである。

                                                                                                                 

 技術調査会社のアルティミーターのアナリストであるオマール・アクター氏は「今回の創業者の辞任劇は、フェイスブックにとって大半の人々が想像するよりもずっと大きな試練であろう。インスタグラムは成長が続いている唯一のプラットフォームだ。しかも、多くの人たちは必ずしもインスタグラムとフェイスブックを関連付けたわけではなかった」と語った。

 フェイスブックが10億ドルでインスタグラムを獲得した時、インスタグラムのユーザーはたった3,100万人だったが、今では10億人のユーザーを擁している。当時は、一切の広告を扱っていなかった。フェイスブックと比べればまだ控えめではあるものの、現在では静止画と動画の両方の広告を扱っている。しかし、その状況もすぐに変わる可能性がある。フェイスブックの成長は鈍化し始め、ウォールストリートは、収益を増加させる新しい方法を模索するよう同社を促している。

 インスタグラムは、その増収のための取り組みの主軸となっている。

 フェイスブックは、財務上の議論においてインスタグラムの将来性を前面的に押し出している。7月、フェイスブックはアナリストに対し新しい指標を公表し、世界中の25億人もの人々が、同社が運営するフェイスブック、インスタグラム、ワッツアップ、もしくはメッセンジャーの少なくともいずれか1つのアプリを毎月利用していると大々的に発表した。特に明示しなかったとはいえ、この調査結果は、フェイスブックがより一層これらの派生アプリに重点を置いていることを強調する形となった。

 フェイスブックはインスタグラムがどれほど収益を上げているのかを公表していない。しかし、ウェッドブッシュのアナリストであるマイケル・パックター氏は、今年のインスタグラムの収益はおよそ60億ドルで、フェイスブック全体の予想収益である557億ドルの10%以上を占めるだろうと予測する。

 フェイスブックの最高経営責任者、マーク・ザッカーバーグ氏はこれまで長きにわたり、インスタグラムの有望性に期待を託してきた。インスタグラムの獲得は、当時、フェイスブック史上最大規模の買収となった(しかし、2年後ザッカーバーグ氏が19億ドルを投じたワッツアップの買収と比べると目立たなくなってしまったが)。そして、買収後も大部分の自主性を維持したままで良いとされた、初めてのスタートアップ企業となった。

 このことが大きな成功につながった。インスタグラムのユーザー数は親会社のフェイスブックよりも早く10億人に到達しただけではなく、ソーシャルネットワークのスタートアップ企業であったスナップチャットの人気機能「ストーリーズ」の模倣に成功し、同企業に深刻な打撃を与えた。フェイスブック自身が何度も挫折した分野での成功を収めたのだ。また、インスタグラムは、もう1つのフェイスブックの競合であるユーチューブに対抗し、長編のビデオを扱う草分け的な存在となった。

 このところ、インスタグラムは順風満帆である。6月、シストロム氏はニューヨークの新しいオフィスの設立を記念して当地を訪れた。このオフィスはジェラート・バーまでも完備しており、ここへ数百人の技術者を雇い入れる予定だ。ほんの1ヶ月前、インスタグラムはサンフランシスコの真新しく輝くオフィスへ移転したばかりだった。ザッカーバーグ氏は7月の業績発表の場で、インスタグラムの成功はフェイスブックとの統合による作用だと声を大にして宣伝し、親会社のインフラを利用したからこそ、自社だけならその2倍以上の期間を必要としたであろう急激な成長を遂げることができたと主張した。

 親会社であるフェイスブックはユーザーのプライバシー問題、選挙への不当な介入疑惑、および、偽ニュースや虚偽の情報を配信した問題などから抜け出せずにいた。加えて、いまや誰もが――若者だけでなく、祖母までもが使うようになったフェイスブックはクールさを失った。そんな状況にもかかわらず、インスタグラムは子会社が独自性をもって経営を行った成功例であり続けている。

 美しい夕焼け、遠い異国で過ごす休暇、くつろいだ朝食、そして赤ちゃんのクローズアップなどの写真や動画を集めただけのシンプルなインスタグラムのデザインは、フェイスブック傘下に加わった後も長い間多くの人のお気に入りであり続けた。今起きている出来事について議論を行う場がツイッターであり、昔のクラスメートたちの近況を知る場がフェイスブックであるならば、インスタグラムは美しい写真や楽しい動画を眺めて画面をスクロールしつつ、リラックスできる場だ。

 さて、この状況は変わってしまうのだろうか?

 アクター氏は、「私は、ザッカーバーグ氏は決して愚か者でないと考える。ザッカーバーグ氏は、インスタグラムがフェイスブックとは分離していることがその人気の大きな理由であることを理解している」と述べた。

 このように、アクター氏は、フェイスブックは、誰もが愛しているインスタグラムの美点はこれからも変わらず、そして、インスタグラムはフェイスブックとの統合を強制されることがない、とユーザーを安心させるのが賢明だと心得ていると考えている。アクター氏は「ユーザーの安心を勝ち取ることはとても大きな効果があるだろう」と言った。

 舞台裏では、この試練はもう少し複雑だ。シストロム氏とクリーガー氏が辞職の理由を語らない一方で、2人の決意は、4月にワッツアップの共同創設者であり最高経営責任者のジャン・コウム氏が同社を辞任した決意と重なる。コウム氏は、フェイスブックが増益に走るあまり、ユーザーのプライバシー保護への全面的配慮など、ワッツアップのメッセージングサービスの中核をなす要素が脅かされる場合は、自らの立場をはっきりさせると何年も前から公言していた。フェイスブックがより多くの収益とさらなる統合をワッツアップに求め始めた時、コウム氏は最終手段を取った。

 インスタグラムのフェイスブックへの統合がさらに進む兆候は、同社の将来像に垣間見られる。5月、ザッカーバーグ氏は、インスタグラムの製品の統括を担当させるべくフェイスブックの幹部を長年務めたアダム・モセリ氏をインスタグラムへ送り込んだ。モセリ氏は、長くインスタグラムを率いたケビン・ウェイル氏を降板させ、親会社のフェイスブックへ戻した。

 アクター氏や他のアナリストによると、このような人事は、インスタグラム創業者たちにとって受け入れ難いものだったに違いないという。創業者も辞職した現在、明らかにモセリ氏がインスタグラムを率いる候補者の筆頭となった。

「ケビン・シストロム氏の支持者たちはおそらく退職するつもりだろう」とアクター氏は言った。

 つまり、フェイスブックはほどなくして新たな試練に直面することになる。それは、インスタグラムを支えてきたクールさの要素を失ってもなお、その成長を継続させる方法を見い出さなければならないという試練だ。

Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP

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